あなたの会社も危うい!? 今こそ情報システム基盤を再考すべきときスペシャル対談 ITR内山×オラクル三澤

日本企業の情報システム部門は、膨れ上がった定常費用に大半のIT支出を充てなければならず、新規投資に割けるのはわずか15%に過ぎないという。こうした情報システム基盤のままでは、長期的な企業の競争力に対してボディブローのように効いてくる。

» 2007年10月09日 10時00分 公開
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 日本企業のIT支出に占める新規投資の割合は、わずか15%に過ぎない。いわゆる「2:8」(ニッパチ)の議論だ。情報システムの複雑性、情報システム部門の行き過ぎたスリム化、運用フェーズの相対的軽視、新しい技術に敢えて挑戦しないシステムインテグレーターなど、背景にはさまざまな課題がありそうだ。今すぐにではないにせよ、どれも日本企業の競争力に対してボディブローのように効いてくる。調査会社、ITRの内山悟志代表と日本オラクルの三澤智光システム製品統括本部長は、今こそ情報システム部門のあり方を再考し、新しいシステムの基盤を構築すべきときだ、と話す。

photo ITR 代表取締役 内山悟志氏

内山 ガートナーによるIT競争力に関する調査でも、フォレスター・リサーチのIT支出に占める新規投資の割合でも、日本は先進国中最下位でした。フォレスターによれば、日本企業のIT支出は、85%が定常費用に費やされ、新規投資はわずか15%に過ぎません。つまり、ほかの先進国の企業では定常費用を圧縮して、競争力を高める新規投資に振り向ける余力があるのに対して、日本はいっぱいいっぱいだということです。売上高に占めるIT支出の割合についても日本企業はやや少ない傾向にあるので、なおさらです。日本企業の長期的な競争力に対して、ボディブローのように効いてくる危険性があるのに、まだまだお財布の紐は固いままです。

 また、依然としてスリムな本社が素晴らしいという考えがまかり通り、本社の情報システム部門は、5人から10人程度のスタッフで企画機能だけを担っていて、あとは情報システム子会社か、ベンダーへのアウトソーシングに頼るという形態が進んでいます。

 グローバルな競争に晒されている企業では、経営の問題としてITの重要性を捉えており、今の情報システムの在り方に問題意識を抱いています。そうしたところでは本社部門を強化したり、すべてアウトソーシングしていたところも一部戻す動きも見られますが、多くの経営者のマインドはまだまだです。どんどん企業間の格差が広がっていきそうです。

 本社の情報システム部門にすべての機能を持たせるかは別にして、ガバナンスやセキュリティの課題に対処するためにも、ITを経営課題のレベルに上げて、本来情報システム部門が持つべき機能は、復活させなければなりません。

photo 日本オラクル 常務執行役員
三澤智光氏

三澤 日本はつくづくモノづくりの国だと感じます。ソフトウェア開発といっても、業務システムだけでなく、自動車や携帯電話端末に何千万ステップのコードが組み込まれています。これらに障害が発生すれば、製品を回収しなければなりません。

 このような組み込み開発には膨大なコストを掛けて、信頼性の高いソフトウェアを開発すべく、日本企業も投資を始めています。コードを簡素化し、開発生産性を高め、カスタマイズコードではなく、パッケージを活用する動きも見られます。モノづくりでは、こうしたEA(Enterprise Architecture)に近い考え方が浸透してきているという印象です。

 しかし、いわゆる業務システムでは、不思議なことにそこが、おざなりになっています。プロジェクトの初期コストとカットオーバーまでの開発コストには「部品」単位で厳しい目を向けるのですが、稼働後の運用にはあまり目が向いていません。

 また、モノづくりの悪い面も引きずってしまっています。調達を例に挙げましょう。日本企業は、ハードウェア、OS、ミドルウェアを個別に部品として吟味し、単価を比較検討して安いものを調達しようと考えているように思えます。つまりインフラを細分化して、データベース、アプリケーションサーバ、監視ツール、バックアップツール、クラスタソフトウェアをそれぞれ、コストで吟味していく傾向があるのです。

 これなら初期コストは下げられるかもしれませんが、それを優先するあまり、稼働後の運用で多くのコストを費やしてしまう結果を招きかねません。

システムの複雑さがさらに増す悪循環

内山 日本の情報システムが障害を起こしやすい背景には、こうした複雑性が背景にあると思います。スタックごとに違うベンダーの製品を組み合わせていたり、同じスタックでも複数の製品を使っているため、障害の起こる確率は、簡素化されたシステムよりも遙かに高くなってしまっているのです。

 また、欧米の情報システム部門には、AD(アプリケーションデベロップメント)の組織とID(インフラストラクチャーデベロップメント)の組織があるのですが、日本には後者の考え方が希薄です。

 本来であれば、都市計画のように、道路を整備して、オフィスビルや病院、学校をつくっていくべきですが、ERPを導入するからサーバもミドルウェアも付いてくるという、アプリケーション主導の案件が日本には多いため、それぞれのサブシステムの付属部品としてばらばらにインフラが導入されてしまっています。

 きちんとしたインフラづくりの計画が必要なのですが、情報システム部門にはそのための人員やスキルが不足しており、プロジェクトごとに選んだベンダーに頼ってしまいます。これでは、複雑性がさらに増してしまうという悪循環です。

三澤 ITRのレポートでは、日本の情報システム部門では開発部門と運用部門の職務分掌が明確にされておらず、きちんとした役割を果たしていないことも指摘されています。例えば、開発部門は運用フェーズを考えていないし、運用部門もバージョンアップを行ったりパッチを当てていくためのきちんとした計画がなかったりします。これではシステム障害もなくならないでしょう。

内山 業務システムを構築する際、企業はポリシーを策定し、ビジネスインパクトを分析し、本来であれば、サービスレベルの要件まで決めてシステム開発を発注すべきですが、ここをきちんと定義せず、ベンダー任せにしてしまっています。これでは、出来上がったソフトウェアの受け入れ検収も責任を持って行うことはできません。上流も下流も、やるべきことを1つずつ放棄してしまっているのです。

変更時のテスト不足がシステム障害を招く

三澤 日本企業の情報システム部門は、開発と運用が本来どうあるべきかを考え直すべきところにきています。企業には山のようにアプリケーションがあります。情報システム部門は、無停止が求められる重要なアプリケーションを見極め、優先度を付けて運用しなければなりません。優先度の高いシステムについては、構成変更とアプリケーション変更に対処すべく、テストシナリオやテスト環境を用意し、十分な期間もきちんと確保する必要があります。

 こうしたテストの重要性は認識されていると思いますが、しかし、工数も掛かるし、専門性の高いスキルが求められます。日本の企業はそのための体制が十分かどうか、いま一度検討すべきでしょう。

内山 開発フェーズの後ろにある単体テストや統合テストは、稼働までに必要な手順なのでベンダーの手を借りながら何とか行われています。しかし、情報システム部門は、人も少ないし、ノウハウも不足しています。テスト環境を整えるためには、マシンも必要になりますが、そこまで予算には見込んでいない企業も多いでしょう。運用フェーズに入ってからのバージョンアップや構成変更に伴うテストまできちんと行う余力はありません。

自動化が切り札

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三澤 情報システム部門も、優先度に応じた運用管理の体制を整える必要性は分かっていると思います。しかし、経営層に納得させる説明ができていません。これは業界を挙げて取り組まなければならない課題といえるでしょう。

 既存システムの維持・運用にIT支出の8割以上が費やされていますが、それは決してハードウェアやソフトウェアの保守費用がかさんでいるわけではありません。多くは人件費なのです。

 致命的なシステム障害を起こさないために、並大抵ではないコストを費やしている企業もあります。バージョンアップや構成変更に伴うテストが良い例です。大量の人員を投入し、コストも時間も必要です。それが手当できなければ、システムに手を加えることを放棄し、塩漬けにするしかありません。しかし、そうなれば、事業の変化にシステムが追従できず、経営者や現場からは、「何をやってるんだ」と批判を浴びてしまいます。

 従来であれば、人海戦術でやらざるを得ないものをソフトウェアである程度自動化することができれば、随分と環境を変えられます。

 10月から出荷開始される「Oracle Database 11g」には、「Real Application Testing」と呼ばれるテスト支援機能が搭載されています。データベースに対するワークロードをキャプチャーし、新しい環境で再現することができるため、テストシナリオの作成が自動化できます。これまでの手法では、およそ120日も要していたシナリオ作成がわずか2日へと劇的に期間短縮できます。

 また、優先度の高いアプリケーションでは、テスト環境も本番環境と同じものを用意する必要がありますが、その構築にもたいへんな手間とコストが掛かります。Oracleであれば、災害対策サイトを構築する「Data Guard」と呼ばれる機能を使い、一時的に災害対策用のサーバをテスト環境に活用することができます。また、Oracle Database 11gの新機能である「Active Data Guard」を使用することで、災害対策用のサーバをレポーティングやバックアップ取得にも活用できます。

新しい技術に果敢に取り組め

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内山 Oracle Database 11gの新しい機能を活用すれば、情報システム部門は2つのメリットを同時に享受できそうですね。

 このところ、日本においてもBCP(事業継続計画)の案件が製造業やサービス業のような非金融業にもようやく広がってきています。ただし、難しいのは、災害対策サイトのコストを合理性あるものにし、それを経営層に説明していくことです。10億円を掛けてつくったシステムを、バックアップサイトにもまるまる構築するというのは説明が難しいわけです。

 そこで、これまで重要だと認識していながら手を掛けられていなかった運用フェーズのテストを充実させるという施策を組み合わせれば、一挙両得ではないでしょうか。「災害対策のリソースを有効活用してテスト環境を構築し、システム障害を避けることができる」と経営層に説明できます。

 こうした新しい技術や製品の機能については、ユーザー企業もシステムインテグレーターも貪欲に勉強しなければならないと思います。新規のシステムを構築する際にも、依然としてOracle9iのような古いバージョンに基にした構築を提案してくるシステムインテグレーターはまだまだいます。枯れているし、技術者も手慣れているし、安全なシステムを構築できるからだということです。

 しかし、それでは10g、11gといった新しいバージョンを使えば、製品が標準で提供する機能も、わざわざ作り込むことになってしまいます。結果として、システムインテグレーターはカスタムコードの費用を請求し、儲かるわけですから、なかなかそこから抜け出せません。彼らには、自ら新しいものを取り入れ、それらを組み合わせて提案して大丈夫かどうかをきちんと検証していく意欲もお金もないように思えます。

 若手の技術者は、本当は11gのような最新の技術を勉強したいはずなのに、そのあいだの売り上げを考えると経営者は及び腰です。多くのシステムインテグレーターには、テクノロジー企業としての機能が欠落しています。それでは最新で良いものを安く提案することはできないでしょう。

 このまま行けば、品質的にも、先進性、拡張性、柔軟性の面においてもアジアの諸国にも置いて行かれかねない、そんなシステムのインフラしか提供できないようなIT業界になってしまうのではないかと危惧しています。

 一方のユーザー企業も、新しい技術や機能を実証してみるR&D機能が不十分ですし、リサーチも行えていません。結局はシステムインテグレーターの提案を鵜呑みにして、高いお金を支払い古いものを使って、またトラブルを起こす羽目に陥ってしまいます。

システムインテグレーターがカギを握る

三澤 運用コストは、カスタマイズするコードを少なくすればするほど下がるはずです。これが今の日本では増える傾向にあります。パッケージの機能を活用すれば、それだけカスタマイズするコードを減らせ、当然、その保守はソフトウェアベンダーに任せることができます。その保守は考えなくてもいいのです。

 しかし、システムインテグレーターに丸投げしてしまえば、どうしてもカスタムコードは増えてしまいます。ここをどう減らしていくかを真剣に考えるべきだと思います。インフラに近いところを日本ほどカスタマイズしている国はないでしょう。しかも、多くの日本のシステムインテグレーターが実装している技術は、アジアの諸国が実装している技術より、古いものになってしまっています。このままでは日本の国際競争力も危ぶまれてしまうのではないでしょうか。業界を挙げて考え直すべきときです。

 われわれも世界最大級の検証施設、Oracle Grid Centerを東京に開設し、さまざまなメーカーのプラットフォームに適合したOracle Database 11gの検証を製品リリースまでに済ませていきます。顧客にそのメリットをしっかりと訴えるとともに、実装のブループリントを示し、システムインテグレーターに対する支援も行っていきたいと考えています。

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『IDC Japan Product Flash(調査レポート): Oracle Database 11g』

Oracle Database 11g
データベースプロフェッショナルのためのGiant Step

 2007年9月に、IDC JapanがOracle Database 11gに関する調査レポートを発表した。

 <IDC Japan コメント>
 本調査レポートでは、日本オラクル(以下オラクル)が2007年9月3日に発表した次期データベース製品、Oracle Database 11gの国内市場へのインパクトについて考察する。
 Oracle Database 11gは、1977年に世界初の商用RDBMS Oracle Databese 2を市場導入して以来、30年目を迎えたオラクルがデータベース技術を集大成すると共に、未来に向けた大いなる一歩を踏み出した製品だ。


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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2007年11月8日

ホワイトペーパー

『IDC Japan Product Flash(調査レポート): Oracle Database 11g』
本調査レポートでは、日本オラクルが2007年9月3日に発表した次期データベース製品、Oracle Database 11gの国内市場へのインパクトについて考察する。