連載
» 2007年11月01日 11時30分 UPDATE

西野弘のとことん対談:小林栄三「物事に関心をもち続けてこそ、時代が見えて来る」(後編) (2/2)

[ITmedia]
前のページへ 1|2       

小林 いや、そこが難しいところですわ。現在、伊藤忠には7つの社内カンパニーがあり、グループ670社、海外130拠点、商品コードも500万ぐらいある。そのデータが共有できないのです。昔から伊藤忠は“野武士集団”といわれ、単体4000人の社員は4000商店と言い換えてもいいくらい事業欲はある。けれど、1人ひとりの頭の中は、例えばコンビニの展開、消費者ローンのサービス、あるいはアパレルのブランドと、担当ごとにクローズしている。

小林栄三氏と西野弘氏 小林栄三氏(左)と西野弘氏(右)

西野 総合商社の“総合”が活かせないんですね。

小林 そうです。繊維のお客さんは食料のお客さんになるかもしれないのに、その情報は属人的にはつながっても、システマティックに上がって来ない。だから、改めてグループの情報化投資を加速しようと思っています。

 どういう製品がどこで売れているか、連結ベースのデータを瞬時に把握できるようにする。言うのは簡単ですが、なかなか難しくて、現行の中期経営計画の最大の課題と思っています。

西野 最後に経営者の立場から、教育問題についてご指摘いただけますか。

小林 愛情の反対語は何でしょう。「無関心」ですね。逆に言えば、関心をもち続けることが愛情になる。僕は人とのコミュニケーションはこれしかないと思うんです。子供が何を考え、何をしようとしているか、親や教師は関心をもたなければならない。その結果、子供のいい面が見え、愛情が生まれるはずなんです。

西野 確かに。最近は親も社会も子供に無関心な人が多いですね。

小林 僕はね、手前味噌のようですけど、総合商社は今後ますます発展すると思っています。なぜなら、日本にとって最も重要なのは食料とエネルギーの安全保障ですが、これは完全に総合商社がイニシアティブを握っている。もう1つ、ITをはじめバイオ、ヘルスケア、環境など社会の変化が速くなればなるほど総合商社は生きやすいんです。なのに、無関心でいてどうするんですか。物事に関心をもち続けてこそ、時代の一歩先が見えて来る。企業経営にとっても「無関心」は罪悪です。

西野 小林さんならではのご指摘です。本日は興味深いお話、ありがとうございました。

対談を終えて

 ITは縦割り社会を乗り越えていく――今回の対談で改めてそれを痛感させられた。小林さんが「ネットの森」を立ち上げた時、商社の予算配分の延長と思っていたが、違った。現実には部門間のを克服し、ベンチャー投資を模索する修羅場の物語があったのだ。

 その成功例であり、今や有力なモバイル・ポータルサイトとなったエキサイトにしても、一時は業績不振の米本社が連邦破産法のチャプター11(更生手続き)から同7(破産手続き)へ変更される危機に見舞われた。その際、小林さんは決断を迫られ、「悩んだ末、米国のサーバを日本に移してアジアの事業権を買い取った」ことが今日の成功につながった。

 連結ベースでの経営データ共有を始めとしたグループ全体のITインフラ構築とガバナンス強化のため、情報化投資を加速するというのも小林さんらしい発想であり、食料・エネルギー部門の出身者からは出て来ないモデルを大いに期待する。しかし、“冬の時代”を超えたとはいえ、総合商社はリスクの塊。100年以上続いた古いビジネスモデルから脱皮しても、今後は5年、10年周期で事業再構築を迫られるだろう。

 その戦略眼が、小林社長に求められているのではないだろうか。


前のページへ 1|2       

Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Special

- PR -

Special

- PR -

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、企業の明日を変えるエグゼクティブのための無料の会員制サービスです。
ぜひこの機会にお申し込みください。
下記入会条件を満たされている方には、ITmedia エグゼクティブ事務局が審査の上、入会のために必要な招待状をメールでお送りいたします。

お名前
メールアドレス
貴社名
※正式名称で記入してください
ご所属名
お役職名
貴社の従業員数

Special

- PR -

お勧めコミュニティー

【CIOの条件】国際CIO学会の役員たち

3月14日に国際CIO学会の新会長に就任した。すでに再任理事、監事に新任を加えて30人ぐらいの役員であるが、その中にCIO関連などICT団体を代表する方々が入っており、友人の教授からすごい組織になりましたね、と新会長就任のお祝いとと共に、組織の拡充を言われた。

【松浦尚子のワイン&コミュニケーション】かぐわしい白い花とアンズの香りが飲む人を驚かせる白ワイン「コンドリュー」

昨晩、私が長年親しくさせてもらい、大変尊敬している外務省のSさんからお誘いをいただき、西麻布にあるフレンチレストランでITや教育、文芸などそれぞれの分野でご活躍の方々と楽しいひと時を過ごさせてもらいました。

【夏目房之介の「ほぼ与太話」】『マンガはなぜ面白いのか』中国版発行

2年ほど前から、いろんな人のご協力をえて、中国の新星出版から『マンガはなぜ面白いのか』(NHK出版)が翻訳出版されました。

節電お役立ち情報(スマートジャパン)

news093.jpg

三菱電機が建設した「大船スマートハウス」は、電気自動車の蓄電池と太陽光発電システム...

news009.jpg

後編では、具体的に見える化システムを活用した例を紹介する。見える化システムで課題を...

news134.jpg

東京都は昨年夏に企業や家庭で実施された節電の実例をもとに、基本方針とすべき「3原則」...

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆