「絶望的人選」からのプロジェクト起死回生策間違いだらけのIT経営(1/3 ページ)

プロジェクトを進めるとき、人材の選定は大きな意味を持つ。しかし、理想的な人材を常に集められるとは限らない。むしろ、理想的な人材配置など不可能というのが現実ではないか。

» 2007年11月15日 09時50分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

プロジェクトにエース級人材は期待できない

 IT導入を成功させる条件の1つとして「プロジェクトチーム(PT)にエース級の人材を投入すべきだ」というのがある。確かにエース級の人材が投入された方が、プロジェクトが成功する確率は格段に高まる。しかし筆者は、エース級の人材を投入されたケースなど、ほとんど見たことがない。あっても、そのエースは従来から担当しているライン業務と兼務で、彼はライン業務に時間をとられてPTから徐々に足が遠のき、やがて「帰らぬ人」となる。

 それならば、いっそのことエース級の人材を期待しない、むしろ、ダメ人材が投入されることを想定して、プロジェクトをいかに成功させるか、次善の策を考えておいた方が利口ではないのか。

 まず、PTのメンバーはどんな役目を負うのか、そのためにはPTの目的がどこにあるかをはっきりしておく必要がある。話を進める上で、概略の定義をしておこう。

 ベンダーからもメンバーが入り、役割も多岐にわたるPTもあるが、ここでの議論は単純化したい。ここでは、ユーザー企業内に設置されるPTとし、その目的はIT導入計画立案から要件定義の策定まで、そしてBPR(業務改革)をリードして完遂するまでとする。

 PTメンバーは、情報システム部門、業務関連部門(例えばSCM導入の場合、営業・生産計画/管理・資材・倉庫・物流・経理など各関連部門)から選ばれ、後者は目的達成のために出身部門の意見をPTに反映し、PTの方針を出身部門に徹底しつつ、PTの業務をこなす。

 ここでエース級の人材を選ぶという意味は、PT推進の中核となる情報システム部門からは担当分野の人材になるだろうから、業務関連部門からいかに優秀な人材を選ぶかということになる。これが、なかなかうまく事が運ばない。

 PT発足が役員会議や部長会議で決定され、席上で優秀な人材を投入するべきだと合意するまではいいのだが、いざ人選に入ると合意は単なる建前となり、優秀な人材を供出したらライン業務がめちゃくちゃになるという本音が頭をもたげる。時には、絶望的人選が平気で行われる。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆