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» 2008年03月10日 07時00分 UPDATE

ビジネス戦略を実現した辣腕CIOの素顔に迫る:【第3回】うそも見破れる関係作りを (1/2)

成功を収めたCIOたちは、社員や顧客とのコミュニケーションに何よりも時間を費やす。それが常に味方になってもらうための秘訣だという。

[Maryfran Johnson,ITmedia]

苦境を打開する徹底した管理システム

 2007年のCIO DECISIONSミッドマーケットITリーダーシップアワードを受賞したIT担当役員の一部は、業務再建の専門家として採用され、ビジネスに即応できるIT業務体制を構築するために、困難な決断を下さなければならなかった。

 ダン・グロース氏が自動車部品販売を手掛けるV.I.P.に入社したとき、同社の6人のITスタッフは、いずれも基本的にヘルプデスク業務を担当していたが、同社のほかの社員と「敵対関係」にあり、不満を抱えていた。グロース氏の任務はIS担当副社長として、ITスタッフに顧客サービスの姿勢を持たせることだった。

 スタッフの何人かは再教育できたが、そのほかのメンバーは入れ替えなければならなかった。自称「コミュニケーション至上主義」のグロース氏は、IT運営委員会を設置し、V.I.P.の全部門(物流、店舗オペレーション、財務等々)のマネジャーの参加を得て、同社の新しいITロードマップを検討、策定した。

 「現在、大掛かりなエンタープライズリエンジニアリングが進んでいる」とグロース氏。V.I.P.はこの1年に、倉庫内無線ネットワークの構築、倉庫管理システム(Microsoft SQL Server 2005上で動作する)の開発、新しいIT購入プロセスの導入など、さまざまな取り組みを開始した。このプロセスの導入により、平均購入単価は50%低下している。

自動車部品販売会社V.I.P.のIS担当副社長、ダン・グロース氏は、システムの全面的な刷新に向けて、ビジネスサイドの声を吸い上げる新しい仕組みを作った 自動車部品販売会社V.I.P.のIS担当副社長、ダン・グロース氏は、システムの全面的な刷新に向けて、ビジネスサイドの声を吸い上げる新しい仕組みを作った

 グロース氏とIT部門は、V.I.P.のビジネス部門のプロジェクトスポンサーの多くから、積極的な協力を得られるようになった。「ビジネスサイドの人々と明確で一貫したコミュニケーションを行い、意見交換を深めれば、彼らは常に味方になってくれる」(グロース氏)

 一方、ロサンゼルスにあるロヨラメアリーマウント大学(LMU)のCIO、エリン・グリフィン氏は、すべての失敗プロジェクトを立て直せるとは限らないことを思い知った。年間収入2億4000万ドルの同大学にグリフィン氏が入職したのは、04年も押し詰まったころ。以前から計画されていた、全学の9400人のユーザーを対象としたポータルサイト「Maingate」の開設を数カ月後に控えていた時期だ。

 このポータルは、オープンな、あるいは標準的なAPIが最初から用意されていなかったため、広く普及しているWebベースの講義管理システム「Blackboard Academic Suite」などをはじめ、ほかのソフトウェアと連携させることが困難だった。「このポータルか、それと連携するプログラムをアップグレードするたびに、連携が崩れ、プログラミングし直さなければならない」とグリフィン氏は説明する。

 実際、LMUの2人の経営学教授は授業の中で、Maingateプロジェクトを、「お粗末な技術導入」の例として紹介している、とグリフィン氏はため息まじりに語る。「このように、高等教育機関でプロジェクトに失敗すると、大恥をさらすことにもなる。もっとも、一番身近な材料を使って、学習効果を上げようという理屈はよく分かる」。いずれにしても、プロジェクトを打ち切るのは大変な決断だ、と同氏は語る。

 「これは金銭が大きく絡む決断だ。自分たちが誤りを犯したこと、そして、状況を打開するにはコストがかかることを、率直に説明することが必要になる」

 LMUはMaingateに代えて、オラクル製品をベースにしたポータルを導入しようとしている。そのためのパイロットプロジェクトを今夏後半から実施する計画だ。

 しかし、グリフィン氏は、破綻プロジェクトの収拾に専念しているわけではない。同氏はLMUのために100万ドルの技術補助金を確保し、昨年、プロジェクトポートフォリオ管理プロセスを開始した。このプロセスは、大学の予算編成管理の方式と親和性が高かったため、各学部や部門もこぞって採用しようとしている。また同氏は、メイン州のボードン大学のCIOと協力し、米国の東海岸と西海岸にそれぞれ位置する両大学を結ぶ、独創的なディザスタリカバリソリューションの構築に乗り出した。

 「われわれがこのプロジェクトの第1フェーズで実現を目指した主要なビジネスツールは、緊急通信システムだ」とグリフィン氏(本稿のために同氏に取材した数週間後にバージニア工科大学で銃乱射事件が起き、構内通信ネットワークの不備に注目が集まった)。

 「今では、われわれは緊急用のウェブサイトと電子メール/音声通信環境を確保し、多数の学生と親に一斉に連絡できるようにしている。このシステムは、一方の大学から他方の大学に引き継げるようになっている」

 グリフィン氏が次に取り組もうとしているのは、LMUのデータセンターにおける電力消費のより厳密な管理だ。「ここ南カリフォルニアでは、これは極めて重要な課題だ」と同氏は説明する。「われわれは従来型の環境から、ブレードや仮想サーバに移行していく。これによって消費電力を大幅に削減でき、関連コストを40%程度低減できる」

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