【第1回】CIOもビジネスに精通しなければ……CIOの実態(2/2 ページ)

» 2008年04月10日 07時00分 公開
[TOM KANESHIGE,ITmedia]
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経営陣を説得してリソースを拡充

 新しいデータネットワークとともに、トーム氏はタディラン・テレコムのハイブリッド電話システムを導入し、大幅なコスト削減を実現した。新システムは、すべての電話呼び出しをコールセンターに集め、そこからスタッフのオフィス、ホームオフィス、あるいは携帯電話に同時に転送する。「われわれの営業活動は、電話に多くを依存している。柔軟性の高い音声ソリューションで営業スタッフをサポートできなければ、コストが増えるか、得られたはずの売り上げを失うことになる」と同氏。

 またトーム氏は、経営陣にテクノロジーの戦略的重要性を認識させ、リソースの拡充を認めさせた。「競争が激化しつつあった業界で生き残るためには、テクノロジーの積極的な活用が不可欠だということを彼らは理解した」と同氏。「経営幹部は、われわれがオモチャではなく、ツールを作っているのだと知っていた」

 トーム氏のようなCIOは、単に部門長としてプロジェクトをこなすだけでなく、経営陣にITの有効性を説き、ITで新しい価値を生み出すことにより、在職期間を延ばしている。「ITエグゼクティブには、積極的にビジネスに関与したいという強い欲求がある」とフォレスターのオーロブ氏。「もしITエグゼクティブが経営的な視点からITを運用し、会社の利益に貢献する方法を知っていれば、辞める必要があるだろうか?」

CIOの存在の重要性がクローズアップ

 一方、CEOとの信頼関係が構築できなければ、CIOの在任期間は短くなる。サンルイスバレー・リージョナル・メディカル・センター(SLVRMC)のCIO、スペンサー・ハモンズ氏は、「CEOやCFOなどと比べて、CIOの役職は新しく、経営陣がCIOとどう付き合うべきかの理解に時間がかかった」と話す。また初期のITエグゼクティブたちは、ビジネス感覚に疎く、しばしば他のエグゼクティブたちに「無能」扱いされていたという。

 しかし、エグゼクティブたちの考えも変わった。中堅企業においてもCEOに直接レポートする体制が一般的、CIOはビジネスに精通しなければ職を失うリスクに直面することになった。CEOもまた、ITエグゼクティブを最高経営幹部に迎え入れる必要に迫られ、IT部門に多大な信頼を寄せるようになった。今回の調査でも、CIOの74%が経営委員会に席を持っていると回答している。

今後3〜5年間にどのようなキャリア開発を目指すか 今後3〜5年間にどのようなキャリア開発を目指すか

 この1年で平均在任期間が短くなったにもかかわらず、ハモンズ氏はCIOが躍進しつつあることを疑わない。「CIOが会社に利益をもたらす存在であることを、他のエグゼクティブたちもようやく理解するまでに至った」と同氏は語る。SLVRMCのCEO、ラス・ジョンソン氏も、そうした見方に同意する。「ITは他の部門と敵対する非協力的な存在から、協調的で責任感にあふれる賞賛すべき存在になった。研究室、薬局、放射線科、事務局、その他の重要な領域で、システムの実装に成功したのも、そうした背景があってこそだった」(同氏)

 とはいえ、背後を気にしながら実装化を成功させることは容易ではない。ウルトラソニック・プレシジョンのCIO、スティーブ・フィッシュマン氏も、IT分野の仲間たちが意思決定と在任期間の短さをバランスさせることに苦労している姿を何度も見た。

 「若いCIOたちはROIに追いまくられている。彼らのキャリアは、6カ月、9カ月、あるいは1年といった短期決戦がベースだ。少なくとも5年程度のスパンで、生産性のレベルを基準に判断すべきだろう」

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