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» 2008年04月18日 07時00分 UPDATE

EC新進化論:ニッチと高付加価値 食品販売オイシックス(前編) (2/2)

[林雅也,ITmedia]
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――ECのテーマとして食品は難しいテーマだと思うのですが、生鮮食品でECをやろうと思ったきっかけを教えてください。

高島 前職のマッキンゼー時代に、クライアントのインターネット事業を立ち上げるプロジェクトに関わってきました。早い段階から衣食住のような生活の基本的なところでビジネスをしたいという思いがありましたし、食品流通は一見遠いようで実はインターネットと親和性があると考えたからです。

 日本の食品流通網は、サプライチェーンが長く、農家からわれわれが野菜を買うことを考えても、農協、市場、中卸、二次卸、そして八百屋さんが介在します。ITを利用すればそのような中間流通を短くすることができます。また、食品は非常にパーソナルなものですから、ネットを使ってローコストの「食のコンシェルジュ」や「食のソムリエ」といったことも実現できるのではと思いました。つまり、消費者の裏側にあるサプライチェーンと、表のユーザーインタフェースをうまく取り持つことができれば、インターネットでも非常に有効な商品だと思ったわけです。

 また、ネットの世界は、米国のビジネスモデルをそのまま輸入することが多いのですが、食品で成功しているネット企業が米国にあまりなかったというのも、自分のモチベーションになりました。

――米国で成功していないモデルに挑戦するのに、不安はありませんでしたか?

高島 当時、米国でもネットスーパーというのは結構ありました。中には売上高100億円くらいの大規模なものも存在していましたが、2000年前後に起こったドットコムバブルを機に相次いで破たんしていきました。自分たちが掛けているコストよりも安い値段で商品を提供するという、存続できないモデルになっていたことが理由だと思います。

 彼らは、ネットで注文して30分で商品が届くというようなモデルをとっており、配送コストがものすごく負担になっていたのです。超高速のロジスティクスに掛けるコストだけでも大変だし、スピードを実現するには巨大倉庫で在庫を抱えないといけません。これでは「利便性」というバリューを実現するためのコストが割に合わないのは当たり前です。

 そこで、オイシックスでは、顧客へのバリューをこのようなスピード配送という利便性ではなく、中間流通を軽くして商品自体の品質をバリューに据えてやることにしました。世の中の役に立ちたいという思いもありましたから、商品の品質に焦点を置くことが自分たちの問題意識とも合致したのです。

――創業にあたっては、まずどこから手をつけられたんでしょうか?

高島 仲間集めですね。学生アルバイトを含めて最初から10人ほどのスタッフからスタートしました。当社は、システム開発もWeb制作もそれに詳しい学生スタッフを集めました。それもあってか、今でもシステム面はすべて内製でやっています。

――苦労されたところは?

高島 商品の仕入れですね。市場に行って、有機野菜売場で段ボールを見て、電話して――そんなところからスタートしました。僕らみたいのが市場に行って「インターネットで野菜売りたいんです」なんて話しても、何を言ってるのかさっぱり分かってもらえない。でも、少しずつ市場の人たちと仲良くなってきて、同情されながら、段々とビジネスが始まったという感じですね(笑)。

 そんな中、新聞記事で日商岩井(当時)が農薬を使わないビジネスをやっているのを知りました。コンタクトを取ったら、提携できることになり、同社のオーガニックグループのリーダーが出向してきて、一緒にビジネスに取り組むことになりました。それまで、実はオイシックスには食に関する専門家はいなかったのです。

――それで、ビジネスは順調に立ち上がった?

高島 いえいえ、最初は全然売れませんでした。月に10万円くらいしか売れなくて、3年目になってトータルでブレイクイーブンになり、黒字化したのは4年目でした。通期黒字になったときは本当にうれしかったですね。


 高島氏が日本の食品流通に対して感じ取った課題は、2つある。


  • 食品は非常にパーソナルなもので、誰もが身体に良いものだけを食べたい。だからといって1人1人に専属栄養士はつけられない
  • 日本の食品流通網は、サプライチェーンが長い

 この解決策になったのがインターネットだった。インターネットには、電子メールをはじめとするローコストなプロモーションの仕組みがそろっている、さらに、サプライチェーンの効率化にインターネットをはじめとするITが活用できる。食品流通という一見インターネットとほど遠いような世界だが、従来の常識とは違った角度からみれば、実はインターネットと親和性があったのである。

 また、「食のコンシェルジュ」を目指すために、商品は高付加価値型となった。高付加価値の商品は、現状では商品単価が高くなるため、数の上ではまだまだニッチな市場だ。通常のリアルな店舗でカバーできる商圏は狭く、顧客数を考えると、ニッチな商品で豊富な品ぞろえを実現するのは困難である。

 ところがECでは、全国のそうしたニッチなユーザーをかき集め、1つの商圏を形成することができるので、リアルの商圏では成立し得ない、ニッチな商品でも戦うことが可能になる。高島氏は「ロングテールの法則」を肌で感じ取っていたということだろう。

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