「わたしという資産から最大限の効果を引き出しなさい」――NetAppのCEOCEOインタビュー(1/2 ページ)

「働きがいのある企業」として評価を受ける米NetApp。社員をマネジメントしていくためには、トップダウンではなく経営層側が低姿勢で接することも必要だという。

» 2008年04月25日 00時15分 公開
[伏見学,ITmedia]

 米ビジネス誌『フォーチュン』が米国企業を対象に毎年実施している調査「最も働きがいのある企業」において、6年連続で上位50社に選出されている米NetApp。ダン・ウォーメンホーヴェンCEOに経営者としての秘訣(ひけつ)を聞いた。


――3月に会社名を「Network Appliance」から「NetApp」に変更しました。今年で創業から16年経ちますが、このタイミングに意味はあるのでしょうか?

ウォーメンホーヴェン 既存顧客や見込み顧客に対して、市場におけるポジションはどうなのかを評価しなくてはいけません。現在、われわれは数十億ドル規模の企業になっていますが、顧客になっていない人たちがネットアップに対してどういう印象を持っているのかが重要だと思います。

 第3者機関を使って世界規模でITエグゼクティブに調査を行い、ストレージベンダーの中で首位はどこかというアンケートを実施しました。その結果、既存顧客のほとんどが同社を挙げた一方で、まだ顧客でない人たちはこの割合が非常に低く、NetAppを知らない人もいました。われわれは認知度アップに注力しなければならないわけです。

 市場におけるプレゼンスを高める必要があります。ユーザーはわれわれを「Network Appliance」とは思っていません。以前からNetAppだと思っていました。「International Business Machine」がIBMになったように、われわれもユーザーが呼んでいる名前と同じ企業名にしようと思いました。

社名、ロゴを3月に一新。市場でのプレゼンスの向上を図る 社名、ロゴを3月に一新。市場でのプレゼンスの向上を図る

 市場において、われわれの見え方や、価値、ビジュアルがどう覚えられるかを特に変えようと思いました。なぜなら、既存顧客ですらロゴに対する認識は低かったのです。名前やロゴなどを変えて、ブランド力や認知度向上のために投資をしていこうということになりました。


――社名変更は、ブランド戦略として非常に大きな挑戦だと思います。不安はないですか?

ウォーメンホーヴェン 既にNetAppという社名で定着しているので心配はないです。先日、ロンドンの入国管理所で呼び止められたので、「Network ApplianceのCEOです」と答えたら、「ああ、NetAppね」と言われました。

 ただし、市場におけるプレゼンスを変えていこうということなので、各国のWebサイトを新たに構築する必要がありました。そのほかは法的な登録や名刺、オフィスの外観の変更など事務的な作業が発生した程度です。


――日本での販売戦略についてお伺いします。過去のメディア取材で、日本の販売パートナーが製品戦略をよく理解していないとおっしゃっていました

ウォーメンホーヴェン パートナーは、その顧客のビジネスあるいはその問題をよく理解しています。しかしながら、われわれの製品については、深さや広さにおいてわれわれの知識レベルには至りません。そこで、戦略を変えて「ハイタッチモデル」という販売体制を作りました。パートナーに対して深く製品知識をトレーニングするのではなく、協力して営業活動していくものです。われわれは営業担当者を増やし、パートナーを介してではなく、一緒にエンドユーザーに提案しています。

 ITエグゼクティブで「ストレージを買いたい」「ストレージを売ってください」と言ってくる人は少ないですが、ITインフラの中ではデータ管理の技術やソリューションは必要です。顧客の問題点をよく知るパートナーと、製品の技術を十分理解しているわれわれが協力することで、完全な形でのソリューションを提供できるようになります。

 現在われわれの顧客の中で最も成長をとげているのは米国の連邦政府関係です。ここで構築したビジネスモデルを日本に持ってこようと考えています。5年ほど前までは、アメリカでも約9割が直販による営業でした。現在はほぼ100%、大手のシステムインテグレーターを介して提供しています。


――フォーチュン誌の調査「最も働きがいのある企業」に6年連続で上位50社に選出されています。この秘訣(ひけつ)や特徴となる取り組みなどを教えてください。

ウォーメンホーヴェン われわれにとって、この結果は非常に重要だと思っています。ハイテク企業の中で、NetAppは特別だと考えております。それは、創設者や経営幹部が10年ぐらいほとんど変わっていないことです。売り上げと市場規模だけ良ければ成功だという考えを皆持っていないことが理由として挙げられます。

 一方で、さまざまな分野から敬意を集める企業になりたいと願っています。われわれの目標は、「顧客」「株主」「社員」「パートナー」「(ビジネスを展開する)コミュニティー」という5つの分野で模範的な企業になることです。

 特に社員という面では、フォーチュンやほかの調査ランキングで示されている通りです。ランキングが高いと、ビジネスをする上で良い影響が出てきます。満足している社員はコミットメントがあり、離職率も低いです。働きやすい会社という評価を受けていれば、高いレベルの人材を採用できます。素晴らしい会社で働いているというプライドも社員に生まれます。

 われわれの社員は経営幹部層に対して信頼を置いており、成功に向けて最善を尽くしています。経営側は、社員に対して最も働きやすい場所を提供する努力をしています。最終的には熱意のある社員が会社の成功につながると思います。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆