景気は極めて微妙な状況だが、何とか踊り場でとどまる景気探検(1/2 ページ)

米国の状況を見て、日本の景気にも不安感が漂うが、極めて微妙な状況にあるが、何とか踊り場でとどまるのではないか。

» 2008年05月14日 08時52分 公開
[ITmedia]

サブプライムショックによるマイナスを相殺

 「昨年秋をピークにした景気後退説」が一部に出ている。景気の山・谷を決める重要指標の1つが景気動向指数のヒストリカルDIで、それに大きく影響するのが鉱工業生産指数だ。2000年基準の鉱工業生産指数は10月をピークに2月速報分まで低下基調にあった。

 ところが今年は鉱工業生産指数の5年に1度の基準年次改定の年に当たり、2月確報値発表段階で2005年基準の鉱工業生産指数に変わった。その結果、電子・部品デバイス工業のウエイトが減り、鉄鋼業・輸送機械工業のウエイトが増えたことなどで、過去の数字が大きく変わりその結果、「昨年秋を景気の山とする景気後退」にすでに入っている可能性は極めて小さくなった。

 最近の鉱工業生産指数は発表される度に大きく変動している。2月分は2000年基準だった速報値で前月比1・2%減と2カ月連続の減少で景気の弱さを示唆していた。しかし2005年基準になった確報値は1・6%増と一転増加となった。

 4月末に発表された3月分鉱工業生産指数・速報値は前月比3・1%減と2カ月ぶりの減少になった。3月分の製造工業予測指数前月比が0・3%増だったことや、事前予想平均0・7%減程度と比べると予想外の大幅減少になったため、再び一部に景気後退説が浮上している。

 製造工業予測指数前月比は4月分が0・3%減、5月分が3・4%の予想だ。2月分の鉱工業生産指数の2005年を100とした指数水準が110・2で過去最高水準だが、予測指数で延長した5月分は110・1でほぼ最高水準に並ぶ。経済産業省は、昨年12月分から3月分まで4カ月連続して生産について「横ばい傾向」という判断をしている。筆者は、景気は横ばい状態で、先行きの見通しもまだはっきりしない、極めて微妙な状況にあるが、何とか踊り場でとどまるという見方だ。

 鉱工業全体でみて在庫調整を必要とする局面ではないので、需要が出れば生産の増加に結びつきやすい。米国経済が4月28日から実施された減税や大幅利下げの効果で、サブプライムショックによるマイナスを相殺し年央以降持ち直すことになれば、日本からの輸出にもプラスに働こう。

 心理データの悪化と実体の足もとの底堅さが日本の経済指標の最近の特徴だが、過度な悲観的な見方が薄れ、個人消費や設備投資などの需要が緩やかに出れば、年後半にかけ景気は踊り場を脱却しよう。

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