【第5回】ビジネスプロセス管理は人手を排除することではないBPMで経営に改革を

BPMはビジネスプロセスやワークフローを自動化し、手作業を削減するアプローチだと定義されてきた。しかし今、BPMの新たな側面が注目を集めている。

» 2008年06月04日 11時29分 公開
[ジェームス・M・コノリー,ITmedia]

 ビジネスプロセス管理(BPM)の成功事例には、世界最大の金融機関や大手石油会社、あるいはコンシューマー製品メーカーといったマルチナショナルな巨大企業の名前ばかりが並ぶ。

 しかし、少なくともそういう時代は終わりつつあるようだ。「いまやミッドマーケットの企業が続々とスタートラインに並んでいる。実際、そうでなければならない。この流れに乗り遅れたら、おそらくその企業は市場で淘汰(とうた)されるだろう」と語るのは、ロンドンのリサーチ・コンサルティング会社、BPMフォーカスのアナリスト、レデク・マイヤーズ氏だ。

 BPMは一般に、企業のビジネスプロセスやワークフローを改善、自動化するシステマティックなアプローチと定義される。当初、ワークフローソフトと呼ばれたツールなどを使って、購買リクエストや受発注プロセスといったタスクを自動化することから始まった。

分析能力も兼ね備えるBPM

 しかしBPMは、分析、ダッシュボード、シミュレーション機能などのツールも含み、社外にも適用範囲を広げて、ビジネスパートナーとのコラボレーションを新しい形でサポートするようになった。中堅企業をターゲットとするBPMベンダーは、テンプレート型垂直市場フレームワークやサービスオリエンテッドアーキテクチャ型プラットフォーム、あるいはワークフローやドキュメント管理ソフトなど、さまざまなツールを市場投入している。

 フロリダ州タンパのグレイストン・グループのエグゼクティブパートナーで、「Extreme Competition: Innovation and the Great 21st Century Business Reformation」の著者でもあるピーター・フィンガー氏は、「比較的小規模な企業は垂直市場向けのアプリケーションを好む」と話す。

 また、マサチューセッツ州ケンブリッジのフォレスター・リサーチのBPMアナリスト、コニー・ムーア氏によると、中小企業はマイクロソフトのWindowsアプリケーションなど、使い慣れたツールに固執する傾向が強く、大企業はJava 2 Platform, Enterprise Editionに依存する傾向が強いという。さらに、小規模な企業は少なくとも実装当初、BPMスイートに含まれるベーシックなワークフローコンポーネントを好み、大規模な企業はより先進的な分析ツールを求める、とムーア氏。

BPMは大企業に機動力をもたらす

 BPMは中小企業(SMB)にとって脅威になるかもしれない、とマイヤーズ氏は指摘する。「ミッドレンジの企業が有利な点は、柔軟で俊敏、そして適応性が高いところだ。BPMは大企業にもそうしたアドバンテージをもたらす。変化に追随できる能力を得て、市場で起きるあらゆる変革を乗り越えることが可能になる」。マイヤーズ氏によると、ある大手メーカーは以前、新製品の市場投入までに6カ月ないし9カ月かかっていたが、BPM導入後は数週間で出荷できるようになったという。

 ほかのITプロジェクトと同様、BPMの実装化においても投資回収率(ROI)が重要な要素となるが、必ずしも人件費の低減を目指すものではない。「ROIの改善は比較的易しい」とフィンガー氏は言う。「それは基本的に生産性の問題だ。システムから人手を排除することで可能になるのではなく、コラボレーションによって達成される」

データの品質向上にも役立つ

 バージニア州ブラックスバーグのアクアリウム製品メーカー、テトラは、数年前からBPMで大きな成功を収めている。アトランタにあるスペクトラム・ブランズの子会社で、従業員800名を擁するテトラは、メタストーム(メリーランド州コロンビア)の「e-Work」を利用して、17のプロセスにBPMを適用した。同社の情報システムコンサルタント、チャーリー・リサンティ氏によると、BPM導入で購買プロセスの所要日数は10日から3日に短縮されたという。またアプリケーションのスペシャリストが、あるプロセスの自動化を完了すれば、データ修正程度の作業は2日、複雑な統合化作業なども1カ月で可能になる見込みだ。

 「多くのユーザーがわれわれのところにやって来て、必要なフォームはどこにあるかといった問題に煩わされず、本来の仕事に集中できるようになったと話す。以前はそうしたことも自分たちで管理しなければならなかったからだ」とリサンティ氏は語る。

 データ品質の向上は、BPMのもう1つのメリットだ。データはプロセスの開始時にロードされて有効になると、その後のワークフローで再入力する必要がなくなる。結果としてエラーが減少した。自動化プロセスは、その多くがエンジニアリング部門と財務部門のものだが、近い将来、海外の拠点などにも展開される予定だ。

 BPMを成功させるには、適切なプロセスで始めることに加え、できれば週ベースでプロジェクトの微調整を行うことも必要だ、とマイヤーズ氏は言う。初期プロジェクトには、エグゼクティブの支援、自動化のための優れたビジネスケース、3カ月で完了させる能力が不可欠だ。そして「20パーセントから40パーセントの機能に集中すれば、本来の価値の80パーセントは実現する」と同氏。残りの価値は、オンゴーイングのインタラクティブな開発で達成できるだろう。

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