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» 2008年06月05日 08時46分 公開

間違いだらけのIT経営:IT導入「ユーザー主導」の正しい姿とは――ベンダーの「面従腹背」 (1/2)

IT導入において「ユーザー主導」の意味をはきちがえると、肝心のシステムそのものに問題が発生する場合が多い。

[増岡直二郎,ITmedia]

高らかな宣言

 ユーザー側からのSIベンダー(以下ベンダー)への不満をいろいろな情報源から拾ってみると、主なものとして (1)自分の都合の良い提案しかしない、(2)自己満足のメニューを提案する、(3)上司の顔色を伺うなど社内の事情を優先する、(4)客の指示通りに実行することをよしとする、(5)技術者がマニュアルに依存し過ぎる、(6)システムが完成すると後は全く沙汰がない、などなど、痛烈な指摘が続く。これらの指摘は、大きくは外れていないだろう。

 ここから、「ユーザーはベンダー任せにしないで、ユーザー主導で行け」となる。

 しかし、完全なユーザー主導で成功した例を、筆者はほとんど見たことがない。その典型的な例がある。

 ある中規模のA量販店が、かつて導入していたPOSに加えてCRMを導入しようとした。A社にCIOという職位はなかったが、コンピュータに詳しいこともあってほとんどCIO的役割を担っていたB取締役管理本部長が中心になって導入体制が敷かれた。CRMにかなりのカスタマイズが予想されたこともあり、Bは「A社主導」を高らかに宣言した。

 しかし、誤算があった。まず、人材である。プロジェクトチームにかき集められたメンバーは、一応各部門の精鋭ということになっていた。しかし、確かに日頃の実務には優れていたものの、問題発見能力や本質を見極める能力に欠けていた。従って、課題や問題を発見して、それらを整理して抽象化する能力、業務をどのように改善したらよいのかという業務改善能力、要件定義能力がまるでなかった。いや、メンバーのほとんどは業務改善の必要性さえ感じなかった。中には、日ごろ不便を感じていた社内の問題をITが自動的に解決してくれるのだろうと考える者さえいた。従って、要件定義などの意味も必要性もよく理解していないため、従来業務の要件をなぞるだけだった。

 トップの意を汲んだB管理本部長が、方針を明確に打ち出したり、システム構築の目標を定量的に示したり、さらに社内意識改革の必要性を強調したりしたが、いかんせんプロジェクトチームメンバーがそれを消化し、実行することができなかった。

 しかし、プロジェクトチームが従来業務をそのままシステムに乗せるために活発に活動していることをもって、B管理本部長はプロジェクトチームの問題に気づかず、むしろプロジェクトチームの活動を評価さえしていた。

 さらに問題だったのは、Cベンダーが「A社主導」宣言を受けて、あらゆる場面で身を引いたことである。

 出来上がったシステムは、従来業務をただ単にコンピュータに乗せただけだった。A社の問題は、何も解決しなかった。

 これは、Cベンダーの某SEから聞いた話である。

 A社のCRMが成功しなかったのは、Cベンダーにも責任があるという筆者の指摘に対して、某SEはA社主導なのだから、いたずらにC社が出てはならないと、ことあるごとに上司から釘を指されており、身動きが取れなかったと筆者に反論した。

 しかし、いくらユーザーがユーザー主導を打ち出したからと言って、眼に余る間違いをユーザーがしでかした時、あるいはユーザーの不適当な動きによってシステムが不成功に終わることが目に見えているときは、ベンダーがユーザーの指導に当たらなければならない。それが、ベンダーの務めだろう。

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