iPhone 3GはNewtonの夢を再び実現する新世紀情報社会の春秋(2/2 ページ)

» 2008年06月18日 06時11分 公開
[成川泰教(NEC総研),ITmedia]
前のページへ 1|2       

気になるバッテリー駆動時間

 一方で、既にiPod touchを利用している立場からすると気になる点もいくつかあった。個人的に心配なのはやはりバッテリーの駆動時間である。アップルの仕様書によると、iPhoneでの3G通話あるいはデータ通信の連続利用時間は5時間となっている。これは一見すると国内各社の最新型の携帯電話端末と比較してあまり遜色ない値ではある。

 しかし、音楽プレーヤーとしてのiPodのヘビーユーザーでもある筆者の立場からすると、日頃、携帯電話とiPodで使い分けている端末が1つにまとまるのは非常に魅力的である一方で、実際に想定される利用シーンでは、それらを1つのバッテリーで賄わなければならないことになり、かなり電池の消耗が激しくなると考えられる。例えば、2泊3日で新幹線等を利用した遠地への出張あるいは旅行に際して、充電器具の準備なしで出かけるのは筆者の感覚としてはやや心もとない気がするのだがいかがなものだろうか。

 もちろんこれは、アップルの製品に限らず現在の携帯端末すべてに共通する課題でもあるのだが、音楽という用途で突出している同社の商品にとってはある意味避け難い宿命であることも事実だろう。しかし、その様に考えるとビジネス用途でのiPhoneを想定した場合、音楽や動画再生の機能についてはその位置づけには従来のiPodとは異なる考えが必要なのかもしれない。逆に、そうした機能を活用できるニーズから、このマシンのビジネス利用が拡大することになるのかもしれない。意外にもそのことが業種や職種を超えたまったく新しいワークスタイルにつながるのかもしれない。実際、iPhoneの可能性はそうしたことまで感じさせるのである。

 一部で指摘されている文字入力の問題については、日頃iPod touchを片手で操作している感覚からすると、さほど大きな障壁にはならないと考える。もちろん携帯電話のいわゆる親指入力に比較して一定の慣れは必要だし、タッチパネル特有の打ち間違いもあるのだが、そのあたりに配慮した新たなソフトキーも用意されているようなので、あとは好みの問題ということになるのではないだろうか。

 国内発売の詳細が現時点でまだ明らかになっていないので何とも言えないところだが、日本のキャリア各社が、アップルとどのような交渉を行っているのかは注目点ではあった。既にグーグルのサービスは日本でも標準で提供されることが発表されているが、ソフトバンクのサービス「Yahoo!ケータイ」との関係なども気になるところである。

 とりあえず個人的には、(かなり高額の投資であった)iPod touchのアップグレードで新しいソフトウェアの使い心地を楽しみつつ、周囲の評判をみながらiPhoneを購入するかどうかを見極めたいと思っている。別に安くなったことが悔しいわけではない(としておく)。

プロフィール

なりかわ・やすのり 1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆