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» 2008年07月14日 08時15分 UPDATE

なぜあの会社は叩かれたのか:危機が重大化する構造――危機の本質とは (1/2)

企業の周りは、さまざまな危機が存在する。それらすべてを管理することは非常に困難だが、押さえておくべきポイントが存在する。

[会澤尚美(Prap Japan),ITmedia]

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 「危機」とは何か。山のようにある。地震、雷、火事(天災)に始まり、システムや商品、サービス起因するもの、ハッカーなどによる企業へのサイバー犯罪、情報漏えいといった企業組織のの過失、株主代表訴訟などの経営上の事件、さらにはウイルスの猛威などのグローバルリスク……数え上げれば切りがないだろう。その無数に存在するリスクに対し、企業は可能な限りにおいて予防措置や軽減措置を取らなければならないのである。

 しかし、リスク(企業が犯す過失、遭遇する不幸なアクシデント)は、いかなる組織であっても完全に回避することはできない。それどころか、実際には小さいリスクであれば、どの組織も――気づいている否かは別として――日常的に遭遇している。無数に存在するリスクを企業はどのように管理していくべきなのだろうか。

 危機管理の古典的な手法は、遭遇すると予期される危機を「頻度」と「重度」でランク付けし、「頻度×重度」が最も高いものを「重大危機(クライシス)」として、優先順位の高いものから対応策を決めていくという考え方である。しかし、そのようにして予測される危機が企業の存続を揺るがすような重大なクライシスなのであろうか。本当に恐ろしい危機とは何だろうか。

危機が重大化する構造

 危機によって企業が受けるダメージの種類はさまざまだ。物的ダメージや財的ダメージ、人的ダメージ(多くの役職員の時間など)の多くは、保険で損失を補うことができるダメージであり、「一過性のあるダメージ」ともいえる。

 本当の危機(重大な危機=クライシス)は、こういった財産や人・物などの目に見える価値の喪失ではない。本当の危機とは、「社会の価値観」に背いた(社会的背任と認められる行為)時に訪れる。社会の価値観を見誤ることによって大きく成長し、やがては取り返しのつかないダメージとなって企業を襲う。「危機」は、姿形の無い「信頼・信用」に傷がついた時、すなわち「社会的背任」という謗りを受けた時に、本格的に拡大して、企業のブランド価値を貶め、その後はネガティブスパイラルを繰り返しながら奈落の底に転落していく(図1参照)。

riskmgt2.jpg 図1:クライシスに陥るネガティブスパイラル

 現代は「社会の価値観」「社会的責任」の有り様は決して一定ではなく、些細なことで揺れ動き、それを見極めるのが大変難しくなっている。昔から、「会社の常識は社会の非常識(もしくは「業界の常識は社会の非常識」)という言葉があった。それに加えて、最近は「昨日の常識は今日の非常識」であることを認識しておかなければならない。

 企業で不祥事が起きると、よく同業他社から励ましの言葉をかけられるという。すなわち、どの企業も大なり小なり同じことをしている、ということなのである。業界の慣習として昨日までは当たり前のよう思われていたことが、たまたまマスコミに告発されることで著しく通常の社会感覚からずれていると騒ぎになる。今までは見過ごしていた、または悪いとさえ気づいていなかった監督官庁も黙認できなくなり、行政処分を下す。さらには企業犯罪にまで発展する。最近に見られる多くの企業や団体での不祥事がこれに該当する。

 身近な例をとっても「円滑な社内コミュニケーション」が「セクハラへ」、「慣習的な謝礼」が「贈収賄へと、価値観が大きく転換した例は無数にある。15年ほど前までは当たり前だった社員の住所録などを社内で公開している企業は皆無に等しい。個人情報の漏えいに当たるからである。「変わり行く時代感覚」――これを察知できないだけで、すでに危機へ片足を突っ込んでいるようなものだ。

 「社会の常識」は、ファッションと同様に目まぐるしく変化するトレンドでもある。個人情報保護法の施行前後は、毎日のように個人情報が漏えいし、最近では食品偽装が大流行している。すなわち、同じことをしていても、ある時は「社会的背任だ」と騒がれて重大な危機になり、またある時はほとんど話題にもならず、大過なく終わる。

 さらに言えば、「それほどまでに悪い事なのか? 」と思わず聞き返したくなるケースも数多くある。例えば昨年、某菓子メーカーが賞味期限を1日過ぎた牛乳を菓子の材料に使用していたとして、世紀の悪徳企業のようにメディアでバッシングされた。農水省もJAS法違反で行政指導し、終には経営構造を大きく変えることにまでなった。同社はそれほどまでに悪いことをしたのだろうか。本当に賞味期限を1日過ぎた牛乳が重大な健康被害を引き起こすのだろうか、と感じた人もいるだろう。

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