コラム
» 2008年08月08日 08時12分 UPDATE

Gartner Column:IT予算をさらに極めましょう (1/3)

前回、IT予算についてのお話をしたところ反響が大きくて驚きましたので、今回は続編をお届けいたします。皆さんのお仕事の苦労が経営層に一目で分かるようなIT予算の考え方をお話します。

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

 前回、IT予算についてのお話をしたところ反響が大きくて驚きました。ご意見やご質問をくださった方々、ありがとうございました。そこで、今回も、IT予算について説明しなくてはならないと使命感に燃えました。今回もIT予算についてです。

 本題に入る前に、寄せられたご質問について触れます。多くは「当社のIT支出額は他社に比べて高いのか安いのかを知る方法はないのでしょうか?」でした。IT支出額が他社よりも高いか安いかを知りたい方が多いようです。

 実は、IT予算額が多い(使い過ぎている)のか少ない(少ないIT支出で効果を大きく出している)のかは定義が難しいので、次回以降に説明をしようと思っていました。なぜなら、企業活動を支えたり、貢献したり、その度合いに対してIT支出額が高いとか安いとかを証明することは意味があると、わたしは考えているからです。そこで、逆にご質問をさせていただいたのです。「他社と比べて高いとか安いとかは、何を基準にしてお知りになりたいですか?」と。前述の考え方から、少し意地悪な質問かなと思ったのですが、ある一人の方は、何と極めて真面目に次のようなことを知りたいとおっしゃってきました。

 ・ サーバ(UNIX、Windows などの別の)一台あたりのIT支出額

 ・ ストレージ(単位容量あたり)のIT支出額

 ・ ネットワーク回線(単位容量あたり)利用料金など

 この質問は、悪くないです。なるほど、極端にテクニカルな指標で比べることができれば、他社よりも費用を使い過ぎているのか、うまく節約できているのかが分かります。しかし、これらテクニカルな指標は、使い方が難しいですね。

 このコラムのテーマは「経営とITの関係を改善する」でした。ITの価値を経営者に正しく理解してもらうことと言い換えられるでしょう。IT調達力だけを誇示しても、経営者は、ビジネスに貢献するITの価値を理解できるでしょうか。あなたが経営トップだったら、どう思いますか?

 先に、回答を言ってしまいますと、これらテクニカル指標のほとんどは、IT予算の規模と相関関係があります。つまり、たくさん調達している企業は、台数や能力あたりの単価は小さくなる傾向があります。逆に、IT予算が小さくなると、単価は大きくなる傾向にあります。賢明な読者の皆さまは「当然のこと」のように受け止められたのではないでしょうか。

 ここで、皆さまに朗報があります。 私ども、ガートナー エグゼクティブ プログラムでは、Gartner World Wide Benchmark Survey という調査を毎年実施しています。これは、IT支出にフォーカスした内容の調査項目が網羅されている調査です。回答者がCIOもしくは上級ITエグゼクティブの方であれば、どなたでも回答できます。当社の調査に参加する意味は、本調査で得られた全世界の回答者の平均値、回答企業が属する業種の企業の平均値を分析し、回答者との比較をした結果を「無料で」受け取れる点です。いままで、そんなデータは、高額な費用を出して買わなければならないとお考えになっていた方々も多いでしょう。

 2008年の調査はまもなく始まるところですから「当社も調査に協力したい」と、お知らせ頂ければ、時期(今年は、秋頃の予定)が来たら調査書をお送りいたします。どうぞ宜しくお願いします。さて、宣伝は、ここまでにして、今回の本題に入りましょう。

 さて、先ほどの「多く寄せられたご質問」の本意を考えて見ましょう。IT調達力を経営者に示したいのはなぜでしょうか。経営者にほめてもらいたいとか、経営者に、わたしは怠けていないと主張したいのか。このコラムの読者の皆さんは、経営者から信頼されているに違いありませんから、どうかご心配なく。

 しかし、前回の反響や、ご質問の内容から察するに、経営者にIT支出のお話をするのは苦手な方が多い気がします。今日は、皆さんのお仕事の苦労が一目で分かるようなIT予算の考え方をお話します。しかも、IT部門の成熟度や経営者のITに関する考え方のレベルによって選択できる、3つのフレームワークを提供します。

 1つ目です。一番簡単なIT予算に関するフレームワークです。IT予算を「開発費用」と「運用費用」の2つに分類します。それだけで完成です。既存システムの改修費用などは運用費用にします。システム開発なのか、システム運用なのかという観点よりも、新しいビジネス価値を生み出すIT支出を「開発費用」、それ以外を「運用費用」と分けると考えた方がいいかもしれません。

 ハードウェアやソフトウェア、人件費、ネットワーク費用や、ハウジング(センター)費用、(情報システム子会社への)業務委託費用などもすべてこの2種類の費用に分類してみましょう。厳密に分けなくてもいいです。ざっくりと分類してみましょう。どちらが何%くらいになりましたか。開発費用が20%以下の方は、経営者から疎まれる存在になっているかもしれません。頑張って、運用費用を削減する施策が必要です。開発費用が30%前後の方々は、まずまずの成績ですが、さらに開発費用にシフトできるように頑張りましょう。もし、開発費用が40%以上ということなら、かなり効率の良いIT費用ポートフォリオといえるでしょう。

 しかし、ここでは何%だったからほめてもらえるとか、叱られるとかいう判定をするのは止めましょう。CIOやIT部門の活動の正当性はこの比率を経年変化で見て評価されるべきです。当然ながら、開発費用と運用費用の割合は改善され続けていることが重要なのです(図1)。

gartner41.jpg 図1

 もっといえば、前任者から、あなたに代わってから 「こんなに改善された!」といった点にこの指標を使うのです。経年変化を経営者に示すために、このフレームワークを使ってください。ということは「ざっくりと分類」してみてくださいというのは、納得できませんか。多少、分類が粗っぽくても問題ではありません。経年変化が分かるように、毎年、同じ分類方法でなければなりませんが、それ以外に気を付けることは特にありません。

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