低炭素時代の発電とデータセンターのあるべき姿とは(前編)トレンドフォーカス(1/2 ページ)

東京電力は、発電でCO2を排出する事業者であると同時に、大規模なデータセンターを運営する事業者としてもCO2を排出する両方の立場にある。低炭素時代の発電とは何か。さらには、最近のデータセンターにおける電力消費の急増に対する模索が続く。

» 2008年08月11日 10時05分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

電力会社とデータセンター事業者の立場

 「日本におけるCO2排出量の約3分の1が、電力会社の発電によってもたらされている。したがって、発電によるCO2排出量を削減することが日本でのCO2削減のカギであり、電力事業者の大きな課題となっている」

 そのように語るのは、東京電力の執行役員で情報通信事業部長を務める清水俊彦氏だ。東京電力は、データセンターに電力を供給している電力会社である一方で、自ら大規模データセンターを複数運営している事業者でもあり、巨大な電力の消費者としての風当たりも強い。7月16日に開催された「AMD Green IT 2008」の講演に登壇した同氏は、電力の供給者と電力の消費者の両方の立場からCO2排出の現状と、データセンターを取り巻くグリーンIT化施策を報告した。

「信頼性が求められるほど効率が悪化していくのがデータセンターの現状」と語る清水氏

先進国の中でも原発比率の高い日本だが…

 日本では1970年頃から高度経済成長の並みに乗って電力需要は増加し続け、東京電力での電力販売量は2007年までに約4倍に増えたが、半面CO2排出量は約2倍増に抑制してきたという。石炭、石油に強く依存してきた火力発電を、比較的CO2排出量の少ないLNG/LPG(液化天然ガス/液化石油ガス)による火力発電や原子力発電にシフトさせてきたことで、kWhあたりのCO2排出量を約4割削減してきたからだ。

 しかし、残念ながら、2007年7月に発生した新潟中越沖地震で、柏崎刈羽原子力発電所の所内変圧器火災と微量の放射性物質の漏えいによる緊急使用停止命令の影響で、7基全ての発電が停止し、その不足分を火力発電に切り替えた影響もあって、現在のCO2排出比率は増加傾向だという。ちなみに、地震前の東京電力における発電電力構成比は、原子力が36%、LNG/LPG火力が40%を占めている。

 また、電源の建設からランニングに至るライフサイクルにおいて、発電方式別によるCO2排出量を比較してみると、原子力はランニング、つまり発電のための燃料燃焼はないためCO2はほとんど排出せず、設備の建設時も比較的排出量が少ないことが分かる。さらに発電方式全体で国別のCO2排出量を原単位(kWhあたりのCO2排出量の比率)で比較したグラフを見ると、原子力発電比率が高い日本(0.425)がと米国(0.576)やイギリス(0.467)などに比べて低い値となっている。

東京電力は70年代から現在まで販売電力は4倍に増えつつもCO2排出量は2倍に抑えてきた
先進各国の中でも日本のCO2排出原単位は低い方だが…
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