ディザスタリカバリ対策──6つのステップ【後編】事例から学ぶ(1/2 ページ)

あらゆる企業にとって必要な情報システムの災害対策。経営者がIT部門を“金食い虫”と認識している場合は十分な予算確保ができないという。CIOは対策をアウトソーシングするなど投資コストを抑える努力をいとわない。

» 2008年09月04日 07時00分 公開
[Michael Ybarra,ITmedia]

 前編はこちらから。


災害対策の実施を経営陣に懇願

Step03

DR投資のビジネスケースを作成し経営幹部の理解と支援を得る

CIO(最高情報責任者)は、ビジネス部門の責任者が予算の確保に動けるように、ディザスタリカバリ(DR:災害・障害復旧)投資のビジネスケース(BC:投資対効果検討書)を作成しなければならない。IT部門はDR対策の助言を行い、実施を担うべきだが、DRの全体的な責任は、各ビジネス部門の責任者に任されるべきだ。IT部門は少なくとも、テストの際すべてのソリューションの効果を測定するべきだ。


 「実際に役に立つことがなければ、それに越したことはない」と思われているもののために予算を獲得するのは大変だ。DRはコストがかさむ場合があるが、売り上げにはつながらない。ROI(投資対効果)を測定するのは難しい。

 Forester Researchのクロジニュースキー氏は、一般的な重要度の分類に従ってビジネスプロセスサービスを複数のクラスに分け、それぞれに対応するBC/DR対策を特定するとともに、各サービスごとに、ディザスタリカバリ支出が運用コスト全体に占める割合を測定することを勧めている。それを踏まえて、各クラスで使われる技術の評価を1年おきに行うとよい、と同氏は語る。

経営幹部とのつながりと彼らの理解が不可欠

 「経営幹部が業務のITへの依存を認識している企業では、DRの取り組みは後押しを受けやすくなってきた」とクロジニュースキー氏。「しかし、ビジネスサイドとIT部門の関係が良好でない企業もある。そうした企業では、DR予算は支持を得にくい。IT部門がコストセンターと見られている場合、経営陣にDRへの関心を持ってもらうのは難しい。彼らが規制当局から対応を迫られているなら話は別だが」

 米国のビール卸売会社、ハウス・オブ・ラローズのブラインガー氏は、大みそかのシステム停止の発生を受けて経営陣のもとに赴き、DR対策の実施を訴えた。「われわれの業務は数日間止まってしまいかねなかった」とブラインガー氏は話す。

 「結果的に数時間の中断で済んだわけだが、経営陣は、必要な対策が取れるようにと小切手を用意してくれた。わたしが説明したのは、『どんな事態が起こりえたか、そのためにどれだけの損失を被る恐れがあったか』だ。提案を持っていったその場で、『必要なものを買ってほしい』と言われたのは、そのときが初めてだった。何カ月も議論したあげく、何も決まらないということがよくあった。この件では、経営陣は理解してくれた。われわれが非常にぜい弱だったことを」


Step04

実際のシステム構築に関してアウトソーシングするか否かを決定する

対策を実行に移す段階で最も重要な判断事項の1つは、IT部門がプロジェクトを実施するためのノウハウとリソースを持っているか、あるいは外部の支援が必要かだ。Foresterが実施した調査では回答企業のほとんどが、DR対策の実施に予想以上の労力がかかったと報告している。


 Gartnerのスコット氏によると、大企業の4分の1から3分の1、中堅企業の4分の3が、DR対策をアウトソーシングしている。

 「多額を投じて自社で万全の対策を取っても、割に合わないかもしれない」とスコット氏。「それに見合う高いリスクがいつ発生するのか分からない。そこへいくとアウトソーシングは、中堅企業にとって非常に魅力的だ。全体的なコストを減らしながら、ビジネスを保護できるからだ」

 外部の支援を導入することを決めた場合は、システムインテグレーターか、包括的なアウトソーシングサービスのどちらかを利用することになる。なじみのパートナーを起用する企業もあれば、RFI/RFP(情報提供依頼書/提案依頼書)プロセスを実施する企業もある。

 テルコ・ソリューションズのバハジ氏は、自社でテープバックを行っていた当社が、DR対策のアウトソーシングに踏み切った理由ははっきりしていると語る。同社は、カナダのトロントに本拠を置く管理サービスプロバイダーのアシグラを雇った。

 「簡単な決断だった」とバハジ氏。「われわれはメーカーだ。われわれのコンピテンシーはITではない。われわれは得意なことに集中したいと考えている。1人6万ドルとか7万ドルも払ってDR対策の要員を雇おうとは思わない。50%のコストでアウトソーシングできるのだから。それに、特定の社員に頼るのは避けたい。それならむしろ、特定の企業に頼るほうがいい」

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