連載
» 2008年09月09日 10時30分 UPDATE

三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時:【第15回】埋まらないシステムと業務の溝(1)〜ITをすぐ「システム構築」から考えない (1/2)

企業に情報システムを導入する目的は、ユーザー部門の仕事が便利になるからでもなければ、IT部門の自己満足のためでもない。企業が最大限の利益を上げるためだ。本質を見極めずにやみくもにシステムを入れても失敗する。

[岡政次(ウイングアーク テクノロジーズ),ITmedia]

 わたしは、前職の製造業で入社以来システム開発や運用、企画、教育などに携わってきた。なかでも開発や運用の標準化に10年以上携わった経験が、わたし独自のあるべきシステム論の源になっている。本当に現場で役に立ち、しかも急激な事業環境の変化にも柔軟に対応できるシステム化とはどういうものか。

導入しても使われないシステム

 システムの標準化の目的は、システム開発の生産性と品質向上の双方を実現するものだ。だから、わたしは要領よく仕事を進めるエンジニアやトラブルシューティングの速い人の仕事の手順を分析する一方で、作業効率の悪い人、よくトラブルを起こす人は何が違うのかを研究していた。そのおかげで、人は与えられた仕事をこなす時に何を考えながら、どのような工夫を凝らすのか、その思考ロジックが見えるようになってきた。

 わたしは開発テーマを担当するときに開発依頼を額面通りに要件定義しない。それは依頼通りにシステム要件をまとめ、開発を行っても「使われないシステム」になる可能性が高いからである。

 決して、現場の人がうその要望を言っているわけではない。つまるところ、自分たちなりの方法論でシステム要件を提示してしまい、目的と手段を混同しているケースが多いからなのだ。それは、現場の人の思い込み、既成概念が本当の要件を引き出せないことに起因している。

 例えば、ワークフローの回付経路を決めるとしよう。現場の人は現行の組織体系をそのまま当てはめようとする。すると品目コードを登録する時の経路に、技術部門、企画部門、経理部門、物流部門それぞれの担当者、課長、部長の承認が必要になる。承認権限を持つのは、基本的には1人のはずだ。しかし、昔からの慣習に基づいてシステムを作ろうとすると、このような呉越同舟型の回付経路になる。実は単純に新しい製品を生産する、販売するという本質が見えなくなっているからである。この本質が見えていれば、わざわざ煩雑な回付経路を設定せずに、シンプルな回付経路にするはずだ。組織変更があってもワークフローに大きな変更を加える必要がない回付経路におのずとなる。

 もう1つの例として、システムには入力画面がなければならないという思い込みがある。だから、システム要件として画面デザインや遷移の条件を当然のように提示してくる。しかし、いざシステムを使い始めると、バッチ的に入力できるCSVファイルのアップロードツールが必要だと言い出し、結果的にせっかく作った画面からの入力がほとんど使われない、などといった現象が起こり得る。

ITをすぐ「システム構築」から考えない

 現場の人たちでも自分たちがやりたいことの本質が見えないまま、業務改善、システム化を望んでいるケースが多いのである。組織が大きくなればなるほどその傾向は強くなる。それを踏まえて、IT部門はユーザーの要望を聞ける耳を持たなければならない。そもそも、ITは企業が利益をあげるための道具でなければならない。

 では、何から着手すればよいのか。それは、会社の業務の本質や業務基準などを踏まえて、本来の業務の流れはどうあるべきなのかを描くことから始めることが重要だ。

 「○○システム構築」とか「××ERPパッケージの導入」などというタイトルの開発プロジェクトは、業務の本質が見えないまま始まった可能性が高いと言える。パッケージソフトを買って、業務課題を解決しようという発想に大きな間違いがあることに気付いていないケースだ。業務課題を解決するのは「システム化」だと言う、勘違いが現場に定着しているのも大きな問題である。

 会社が大きくなるにつれて現場は組織の細分化や業務の縦割りが進み、会社に利益をもたらすシステム化構想を立案するのが非常に難しくなってくる。事業活動の最終目的は、利益を上げることにある。多くの利益を上げて株主に配当し、国に税金を納めるという形で社会的貢献をするのが、企業の共通の目的といえる。

 企業にコンピュータを導入し始めた当初は、業務の効率化が主体だった。機械計算課という名前の通り、高速演算と大量印刷という特性を生かしてルーチンワークのシステム化が行われてきた。例えば、給与計算、経理の月次、期末処理など、それまで人間がそろばんと鉛筆と紙でやっていた作業をコンピュータシステムに置き換えて、大きな効果を挙げてきたものだ。この頃は、誰が見ても大量のルーチンワークが企業活動のボトルネックで、その生産性と作業精度を向上させることがそのまま利益の向上につながるものだった。

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