以下に回答例を作ってみました。このように、考えるとビジネス戦略やIT戦略の骨組みが見えてきます。
もちろん、最初の設問への解答はCIOご自身でお作りになっている「仮説」なので、これは事業(ビジネス)部門の同僚かCEOやCOO(最高執行責任者)といった経営トップの方に検証するといった行動が必要です。検証の際にCIOがCEOやCOOに言うセリフは次のようなことです。
「……にフォーカスすればビジネスで勝てると確信します。これには、……のビジネスケーパビリティ(能力)が必要になります。
ITは、……の戦略的トレードオフを行うことになります。これでよろしいですよね?」
図2で回答したことを、順々に「……」に挿入すれば、完成です。そして、Yes or No の回答をもらうことができれば、完璧です。前回からお話している「自社の価値理念」について、明確に理解しているか、もしくは経営トップと共有化できていれば、大きな間違いをすることはなく、ほかの上級エグゼクティブからも異口同音に賛同を得ることができるでしょう。CIOやITエグゼクティブの皆さまに、Gartner EXPは「ビジネスをよく理解して、ビジネス成長に貢献してください」と常に申し上げています。
「ビジネス部門のエグゼクティブや経営トップの方々から信頼を得てください」とも申し上げています。検証の際のセリフを上手に言えれば、CIOやIT部門に対するほかのエグゼクティブからの見方が変わるに違いありません。ともすれば、IT部門は、コンピュータに向かって(社内ユーザーから)言われたことだけをやっていると勘違いしている他部門やエグゼクティブに対して、「かけがえのない存在」とアピールできるチャンスがあると思うのです。
さて、Gartner EXPでは、戦略には(1)戦略の方向性、(2)戦略目標、(3)戦略目標を達成するためのリソースの3つの要素が最低限定義されることが必要だと言っています。ここまでのアプローチで、「戦略の方向性」の一部を見出すことができるのではないでしょうか? ちょうど、時期的に来年度以降の中期計画(つまりIT戦略)を策定されている方々が多いと思いましたので、前回のコラムに対するご質問からこのようなご説明をさせていただきました。
そこで、IT戦略に対する金言を読者の皆さまにご披露します。「役立つ戦略記述書は試金石になり、役立たない戦略記述書は、W.O.R.N.(ウォーンと発音してください)になる」です。
Gartner EXPには、世界中のCIOからIT戦略に関する不満が寄せられます。最大の不満は「策定したIT戦略が実行されずに放置されること」です。しかし、Gartner EXP ではこれらの不満を漏らすCIOが策定したIT戦略記述書及び実行計画書には、次のような特徴があることを見出しています。
これでは、残念なことに W.O.R.N. になります。あ、W.O.R.N. とは何か? Write Once Read Never の略です。一度書いたら二度と読まないという意味です。
では役立つIT戦略とはどういうものでしょうか。以下のような特徴があります。
もう少し、噛み砕いて説明すると、
ということなのです。
あなたが、今書いている、もしくは書き終わった戦略記述書(IT中期計画と表現している企業も多いようです)は、皆さんからよく読まれていますか? やはり W.O.R.N.ですか?
2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授