週末メールや付箋を活用――情報共有が組織を強くする問われるコーチング力(1/2 ページ)

前回の連載で示した「4つの質問」はリーダーだけでなく、チームや組織に対しても有効なコーチング手法である。

» 2008年11月26日 08時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]

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 2009年3月に開かれるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けて、監督とコーチ陣、一次候補選手が選出された。監督には巨人の原辰徳監督が選ばれた。チームは「サムライジャパン」と命名され、WBCの2連覇を目指す。

 今回の監督選びは紆余曲折があった。北京オリンピックの代表監督を務めたものの、期待に沿う結果を残せなかった星野監督の名前も挙がった。しかし、イチロー選手が「最強のチームをつくるという一方で、現役監督から選ぶのは難しいでは、本気で最強のチームをつくろうとしているとは思えない」、「北京の流れからリベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能でしょう」と発言したことで、セントラル・リーグの優勝監督である原氏が選ばれた。

 このようにイチロー選手が発言したことは実にいいことだと思う。選手側の意見を聞いて、監督を選ぶというのは重要なことである。北京オリンピックのリベンジをするのではなく、最強のチームをつくり、最高の環境で戦い勝利したい。そう思うのは、選手として当然のことである。

 星野監督のことをとやかく言っているわけではない。プレーするのは選手であり、選手がいいと思う監督、現役で最強の監督を選ぶのが筋である。選手も巻き込んで監督を選んだならば選手も納得する。選手も自分たちが選んだという意識を持ち、自身の発言についても責任を持つだろう。

 一部の球界の重鎮だけが集まって監督を決めるという従来のやり方で、果たして選手が納得するだろうか。恐らく試合にも勝てないだろう。今回は選手側から意見を提示し、それを考慮した上で原監督が選ばれた。一部の人だけではなく、かかわるすべての人が「情報を共有する」ということは、強い組織をつくる第一歩になるのである。

情報共有を促進する4つの質問

 前回、ゴールを設定し、それを達成していく上で役立つ「4つの質問」を紹介し、リーダー自身が自己変革するために活用する方法を解説した。おさらいになるが、4つの質問とは次の通りである。

  • うまくいったことは何か?
  • うまくいかなかったことは何か?
  • うまくいかなかった原因は何か?
  • 次の一手は何か?

 今回は、この4つの質問を組織で活用する方法を説明する。これらの質問を組織で活用するメリットは何だろうか。

 それは、何よりもチームや組織内の情報共有が進むことである。ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)が大切だといわれるが、現在の職場ではこれが十分に行われていないという問題をよく耳にする。原因は、IT技術が普及しメールなどで連絡を済ませてしまうこともあるが、1990年代後半から導入され始めた「成果主義制度」が大きく影響しているとわたしは考える。この制度では、一定期間にどのような業績を上げたかということですべて評価される。従って、同じチームや部署のスタッフが「仲間」ではなく、成果を競い合う「敵」になってしまった。

 仲間であれば、連絡や相談を密にして、組織としてよりよい成果を上げるために自然と協力し合う。しかし、お互いをライバルと考えるようになったら――その結果は明らかだ。

 成果主義の悪い面が出てしまうと、職場には「おれが、おれが」という風潮が広がり、ホウレンソウが行われなくなる。これは企業にとって、とても悪い状況である。1人でできることは限られるし、グローバル化を迎える中で組織が一致協力して立ち向かっていかないと、成果は残せない状況になっている。勝つ組織になるには、情報の共有は欠かせない。そのために4つの質問が役立つのである。

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