経営環境の変化に対応できないトップは埋没する間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)

企業を取り巻くビジネス環境の急変ぶりには目を見張るものがある。昨日売れたものが明日も売れる保証などない。大企業が必ず市場競争に勝ち残るわけでもない。今、経営者の助けとなるものは何であろう?

» 2008年12月24日 07時45分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

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 経営環境が激変している。例えば、(1)グローバル化に伴う変化(米国における金融問題、中近東などの石油をはじめとする原材料費の乱高下、新興国の景気減速など、グローバルな問題の影響を大企業のみでなく中小企業も強く受ける)、(2)顧客そのものの変化と、顧客と企業の関係における変化(顧客の低価格かつ良品質志向、顧客嗜好の多様化と商品の短命化、インターネットによる顧客情報の直接入手や直接取引)、(3)技術の変化(設計・生産技術、情報技術面での大きな進歩)などの経営環境の変化に、トップは果敢に対応していかなければならない。

 その時こそITは大きな助けとなる。しかし、経営環境の激変にただ恐れて立ちすくんでいたり、ITがどれほど環境変化の対応の助けになるのか分からなかったりするトップはIT導入をためらう。

零細企業でも勝機あり?

 グローバル化について、具体的な例を示そう。ある小規模の電子部品メーカーは、最近の原料高にもかかわらず取引先からの値下げ要求や受注減少予告に、どう対応すべきか頭を痛めている。従業員5人ほどの運送業者は、ガソリンの高騰で資金の蓄えが底をついてしまった上に、繁閑の調整弁としてきた日雇い派遣労働者が廃止されるという話に途方に暮れている。中堅の情報通信機器メーカーは製品の30%を輸出しているが、円高で悲鳴を上げている。

 かたや、中小、零細といえどもたくましい企業もある。全社員2、3人のあるアパレル問屋は中国から衣料を輸入している。社長は中国への出張をなるべく抑えて、テレビ電話やインターネットで商談を進める。都内にある10人ほどのソフトウェア開発会社は、インド人や中国人を4、5人雇っており、イスラエルの企業にソフト開発の依頼を計画中だ。50人程度の社員を抱える電子部品メーカーは、インドネシアの企業に製品の生産を委託し、技術者が年に数回インドネシアへ技術指導に出掛ける。最近はインドネシアの人件費が高騰してきたので、先を見据えてインドやベトナムへの進出を計画し始めた。現地調査の準備段階として、インターネットでインドやベトナムの情報収集に努めている。

 かつては、海外への進出は大企業の関心事だった。しかし近年、小企業、零細企業まで海外へ進出し、人件費や原料費高騰への対応、現地で生の市場情報を収集などの時代になっている。もちろん、これらの企業は為替変動の影響を直接受けるし、取引している国の景気変動の影響も受ける。しかし彼らは、理屈抜きで海外からの影響への対応方法を学習しながら、本能的にすばやく対応する。一方でITの力も賢く活用する。今困っているから、それらの逞しい企業のように今すぐどうすると言っても無理である。日頃からの心構えと周到な準備が必要なことは言うまでもない。

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