コーチングの神様に聞く、優れた経営者の条件とは(2/3 ページ)

» 2009年01月27日 07時30分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]

あなたは本当に変わりたいのか

――顧客選びにおいて基準としていることはありますか。

ゴールドスミス まずは顧客が挑戦しようという意欲を持っていないと話になりません。「変わりたい」という気持ちは、顧客の中からわき上がってこなければなりません。コーチが言ったからではなく、自分自身が変わりたいという意識がないといけません。変わりたいと思っている人を変える支援はできますが、変わりたくないという人を助けることはできません。

 2つ目は、コーチングの対象となる社員が公平なチャンスを与えられていなくてはなりません。社員を変えたいと言いながらも、心の中では解雇しようと思っている会社もあります。成長するチャンスを与えられていない社員を変えることはできません。

 3つ目は、変えたいものが行動にかかわるものでなければお手伝いできません。ある製薬会社で起きた例を紹介しましょう。この会社の人事担当者から「当社の医師Xにコーチングしてほしいのです」と依頼があったので、「Xさんの抱える問題は何ですか」と聞き返しました。すると、医療の最新技術を知らないので教えてほしいとのことだったのです! わたしは行動に関するコーチングの専門家であって、医療業界の専門家ではないのに、何でも解決してくれると思われたのでしょう。


――人々をコーチングする上で心掛けていることは何ですか。

ゴールドスミス 先ほど述べたように、わたし自身よりも顧客のことを中心に考えています。その顧客がフィードバックをきちんと聞く姿勢にあるかどうか、周囲の人たちのコメントに耳を傾けることができるかどうか、本当に努力をして自分自身を変えようと思っているかどうか。変わることに対して前向きかどうか。そうしたことをわたしは常に気に掛けています。


――成功する経営者、失敗する経営者の違いは何でしょう。

ゴールドスミス 最も重要なのは、他人の意見に耳を傾け、そこから学ぶことに前向きであることです。成功することで自分自身を見失ってしまったリーダーを数多く見てきました。彼らに欠けていたのは、まさに人から学ぼうとする姿勢です。急激に変化する世界において、経営者にはこのような資質が必要です。


――GEのジャック・ウェルチ氏など、これまでに多くの優れた経営者を近くで見てきました。良い経営者の共通点というのはありますか。

ゴールドスミス 経営者はエゴというものが会社のどの社員よりも際立ってしまいます。一方で、常に自分が正しいとか勝っているとかなどを主張しないというのはリーダーにとって難しいことです。優れた経営者はエゴを経営とうまく切り離して物事を進めることができます。

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