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» 2009年01月30日 11時44分 UPDATE

NTTデータ イノベーションカンファレンス 2009 Report:「システム延命」というトレンド

SaaSとクラウドコンピューティングとデータのマッシュアップ……コストを抑え、企業の成長に見合った的確な投資が米国でのITトレンドだ。

[杉浦知子,ITmedia]

 「不景気だからといってIT投資を控えるべきではない」――1月29日に開催された「NTTデータ イノベーションカンファレンス2009」で、米NTT DATA AgileNet L.L.Cの本城啓史パロアルトオフィス拠点長は2008年から続く不況の中で変化しつつある米国のIT市場トレンド、企業ITのトレンドについて講演した。

景気後退期のITトレンドはSaaSとクラウド

米NTT DATA AgileNet L.L.Cの本城啓史氏 米NTT DATA AgileNet L.L.C 本城啓史氏

 2008年、米国市場では金融業、製造業の落ち込みが激しく、特に消費の冷え込みの煽りを受けて製造業は回復が困難といわれている。流通業への打撃も大きく、2008年のクリスマス商戦の売り上げの大幅な減少を受けて倒産する小売業も出てきている。

 IT投資を続けるべきという本城氏は、2008年米国のクリスマス商戦の際、不況だからといって単に人件費の高い従業員を解雇したために倒産した米国の家電小売業の例を挙げた。反対に、ITを使って売り上げを確保した小売業もあった。

 「ビジネスの成長に合わせたIT投資をし、ITを効果的に使わないと、特にグローバル化を進める企業は生き残れない」(同氏)

 景気後退期の効果的なIT投資として、米国企業ではSaaSとクラウドコンピューティングが注目されているという。「今は1年後の経営状況を正確に予測できる企業は少ない。成長に応じてIT投資を変え、システムの寿命を伸ばす取り組みがトレンド」と本城氏。売り上げを増加させることよりも短期でコスト削減の成果が見えることが大切という。不透明な先行きを予測して先行投資するよりも、ビジネスの成長に合わせて的確に投資する必要があるのだ。

 SaaSやクラウドコンピューティングが注目されている理由は「目に見えてコストカットができるから」という。日本では多額な投資をして人事管理システムなどを自社用にカスタマイズしているが、SaaSを使えば雇用の流動にも柔軟に対応でき、運用に見合ったコストで運用できる点に米国企業は価値を見出している。

 今までは落ちないシステムを作るために、ピーク時に合わせてシステムにパフォーマンスを持たせてきた。ところが、実際にそのリソースを使い切る場面はほとんどない。クラウドコンピューティングでは、システムの使用状況に応じて課金されるため、無駄なコストがかからない点で注目されている。

 データマッシュアップも注目されている技術の一つだ。新しいシステムに切り替えずに、古いシステムからデータを抽出して提供することで、システムの延命につながる技術だ。米国ではシステム運用に見合った投資をし、システムを延命させ、安価にグローバル展開ができるようインターネットを活用している。

グローバル進出の成功の鍵は「グローバルITデリバリ」

 「業種にかかわらず、グローバルな市場で競争力を高めることが企業が成長する条件」と本城氏。米国では企業のグローバル進出が盛んという。ただし、新規にグローバル進出する企業すべてがグローバルなITインフラを新規に構築するのは困難である。専門のITのアウトソーサーを効率的に使うことでそれらのコストや手間を軽減する動きがある。その動きが「グローバルITデリバリ」だ。

 国によってネットワークのインフラが異なり、法律や、コンプライアンスに求められる要件も異なる。そのすべてに対応するインフラを自社で構築しようとすることは大変であるため、その地域のアウトソーサーを活用する手がある。本城氏が挙げる例によると、米HPや米Oracleといった企業は、事業の中核を担うデータは米国のデータセンターに持ち、給与計算や人事といった間接業務のデータはインドにあるデータセンターに持つことで、世界進出をする際のコストを削減しているという。

 「IT投資の可視化」も重要なキーワード。企業の経営層はIT投資の指標を立てているが、現場からの報告ベースでのIT投資の効果測定が困難という実情がある。経営指標に基づく業績のリアルタイムにモニタリングする動き「Corporate/Enterprise Performance Management」ではビジネスインテリジェンスツールと組み合わせ、IT導入の効果を可視化する。リアルタイムの経営状況を把握し、効果的なIT投資に結びつける動きだ。

Web2.0のビジネスモデルは終焉

 IT市場のトレンドも変化しつつある。YouTubeやFacebookなどを代表とする無料のインターネットサービスで、多くのユーザーを集めて広告で収益を上げるWeb2.0のビジネスモデルへの新規参入が今後は不可能になっていくという。既存のサービスは伸びる余地があるが、新規でこれらのサービスの参入は難しいという。ベンチャーキャピタルの投資が、これらのサービスではなく、エコロジー系のサービスの投資に向いているからだとしている。

 「ITの広告市場はまだ伸びてはいるが、以前の勢いはない」と本城氏。多くのユーザーに配信する広告から、ターゲット広告が打てる仕組みをネットサービス側が提供する必要があるという。

 このようなトレンドの変化を受け、無料のコンシューマー向けのSNSやブログサービスを手掛けていた企業が、企業向けのアプリケーション開発にシフトし始めているという。「企業向けのアプリケーションで新しい製品やサービスが開発されるものと期待されている」と本城氏は次なるアプリケーション開発に期待を寄せた。

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