WBCの監督に学ぶ、超一流社員を率いるためのリーダー術問われるコーチング力(2/2 ページ)

» 2009年03月18日 07時30分 公開
[細川馨(ビジネスコーチ),ITmedia]
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星野監督は選手と多くの時間を共有したのか?

 2つ目に、できるだけ多くの時間を選手と共有し、信頼関係を築くことである。この信頼関係がチームの肝となるのだ。試合では状況に応じてピッチャーを代えたり、代打を出したりする。交代を告げる監督と選手との間に信頼関係が築けていないと、「なぜおれが外されるんだ?」と監督への不信感を募らせ、大きな亀裂が生じかねない。一度できてしまった両者の溝を埋めるのは至難の業である。チームのために全力を尽くすという意識が浸透していないと、監督への不信はさらに深まるだろう。

 監督への信頼感は、チームへの信頼感につながる。「この監督についていったら間違いない」と思えるようになったら、選手はとても高い能力を発揮する。監督を信頼し、チームを信頼することで、選手の力が限りなく引き出されるのである。

 一流の選手たちをそろえながらも、メダルを取れずに終わった北京オリンピックの星野仙一代表監督は、オリンピック前にマスコミに頻繁に露出していた。個人的な意見だが、あのとき星野監督は、選手と共有する時間、信頼関係を作る時間を十分に持つことができなかったのではないだろうか。

好き嫌いで人材登用してはいけない

 この2つのポイントは、ビジネスの現場にも当てはまる。組織の中に「おれが、おれが」という人がいたら、どんなに良い人材が集まっていたとしても、その組織はまとまりを欠いてしまう。組織のメンバーに「組織のために全力を尽くす」という意識を植えつけ、メンバーとの時間をできる限り共有し、信頼関係を築く。そうすることで、成果を出せる組織になるのである。

 なお、これらに加えて、以前紹介したように、メンバーのタイプ(理論派、友好派、現実派、社交派)を把握して、それに応じたコミュニケーションを取ることも、重要である。詳しいコミュニケーションの方法については、その回のコラムを参照してほしい。

 選手がどのようなタイプかを見分ける際には、言葉ではなく、行動を観察することである。口では何とでも言えるが、行動は嘘をつけないからである。

まったくの私見ではあるが、わたしなりに代表チームの選手のタイプを分析すると次のようになる。


イチロー―理論派

松坂大輔―社交派

城島健司―友好派

ダルビッシュ有―社交派

青木宣親―理論派

村田修一―友好派


 なお、監督(リーダー)として、決してやってはいけないことが1つだけある。それは、自分の好き嫌いで選手(社員)を起用することだ。1度でもそのような起用方法をとってしまったら、それまで多くの時間を共有して築いた信頼関係が、一気に壊れてしまうことを肝に銘じてほしい。

 一流の人材が集まった組織は成功する可能性もあるが、ささいなことで、失敗する危険性も高い。今回挙げたポイントを参考して、せっかくの優秀な人材を有効に活用し、組織の力を引き上げるリーダーになってほしい。


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プロフィール

細川馨(ほそかわ かおる)

ビジネスコーチ株式会社代表取締役

外資系生命保険入社。支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年に当社を設立し、代表取締役に就任。コーチングを勤務先の保険会社に導入し、独自の営業システムを構築、業績を著しく伸ばす。業績を必ず伸ばす「コンサルティングコーチング」を独自のスタイルとし、現在大企業管理職への研修、企業のコーポレートコーチとして活躍。日経ビジネスアソシエ、日経ベンチャー、東商新聞連載。世界ビジネスコーチ協会資格検定委員会委員、CFP認定者、早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。


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