【第5回】ぶれない経営――不況期のブランド戦略を考える石黒不二代のニュースの本質(1/2 ページ)

未曾有の不況に直面し、改めて「サステナブル」を掲げる企業は多い。ただし価格競争に陥り、安易に安売り戦略に走ってしまうと、これまで積み上げてきたブランドイメージは崩壊してしまうという。

» 2009年05月13日 08時15分 公開
[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

 Sustainable Companyという言葉があります。米国では、「Sustainable Company=永続的企業」となるための企業論が盛んです。大企業が経済の中心となっている日本では、以前はなじみのない言葉だったかもしれませんが、1990年代の「失われた10年」を経て、2000年以降のドットコムバブルの崩壊や今回の金融危機が招いた100年に1度の不況を経験しているわたしたちは、大企業といえども、永続するという保障がどこにもないということを理解し始めています。Sustainするためには、市場の変化に対応できる柔軟な組織づくりや、不況を乗り切る強い経営基盤が必要とされます。

 さて、こういった不況期に必ず起こる価格競争。好況期には高級品が、不況期には安価な製品やサービスが売れるのは避けられない事実ですが、一度価格競争に陥ってしまうと、景気が上向いたときにそれを是正するのは容易なことではありません。消費者は、ブランドに敏感で、いったん安売りのイメージができてしまうと、ブランドの変更にはおよそ15年を要すると言われています。安易な価格政策は、Sustainのためには命取りです。では、100年に1度の不況と言われる今、価格競争激化の嵐の中でわたしたちはブランド戦略のかじ取りをどうしていけばいいのでしょうか。

不況に強い企業の共通点

 まず、今回の不況のイメージを見ていきましょう。勝者は少ないながら、勝てる企業については、ほぼ統一見解ができてきたようです。ここでもやはり価格というタームは外せていません。

 1つの潮流は、安価な娯楽です。ビデオやゲームなど、大恐慌時代のハリウッドの成長と同様のイメージでしょう。例えば、米国最大手のゲームショップチェーンを展開するGameStopの売り上げは、ほかの小売店が散々な結果を残した昨年のホリデーシーズンにおいて前年比で20%ほど上昇しています。同社は、米国最大の書籍小売店舗のBarnes & Nobleから2004年にスピンオフした会社で、その安価で豊富な品ぞろえのために、日本からも個人ユーザーの購入が絶えません。今年400店舗もの新しい出店計画をしており、全店舗数は6600店舗以上になりそうです。

 もう1つは小売の分野で、やはり安売りに需要が集中しています。一見すると、安売り企業の一人勝ちなのですが、実際には、単なる安売りではなく、インターネット需要の拡大を踏まえ、大きなシステム投資を行い、品ぞろえと低価格の両方を実現している企業が勝っているようです。日本で言えば、ユニクロ楽天、価格.comなどです。

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