景気の山は後ずれへ、戦後最長の景気拡張がさらに延長景気探検(1/2 ページ)

景気の山、谷の後ずれによって、戦後最長の景気拡張期間は69カ月ではなく73カ月になる可能性が大きいという。

» 2009年05月21日 08時30分 公開
[景気探検家・宅森昭吉,ITmedia]

 景気の山は現在2007年10月となっていて、これが次回の谷発表まで変わらないことになっている。しかし、生産関連統計で今年4月に2009年2月確報値までの年間補正が行われたことなどもあって、景気の山、谷を決める景気動向指数の採用系列も過去にさかのぼって変更された。このため景気動向指数・一致系列のデータの中で、鉱工業生産財出荷指数や中小企業売上高といった系列で、ブライ・ボッシャン法で求めた景気の山がそれぞれ、2007年10月から2008年2月に、2008年5月から2008年7月に後ずれした。

 このため、景気動向指数・一致系列から計算するヒストリカルDIは、2007年9月分〜11月分が63.6%、2007年12月分〜2008年2月分までが54.5%、2008年3月分〜7月分までが27.3%、2008年8月分から2009年2月分までが0.0%となった。

 このことから判断すると景気の山は、ヒストリカルDIが50%を切った2008年3月の前月2月だと認定される。次の景気の谷の発表時には、景気の山は2008年2月に改定となり、戦後最長の景気拡張期間は69カ月ではなく73カ月と、6年超だったということになる可能性が大きい。

 景気の山を付けた後の後退局面は、夏場までは従来型の緩やかな景気後退局面だったが、リーマン・ショックが生じた後の秋以降は、「つるべ落とし」や「フリーフォール」といった表現がふさわしい急激な悪化になった。

史上最悪のGDP減少率に

 将来新たに景気の山と認定されるであろう2008年2月分の鉱工業生産指数の指数水準が110.1で史上最高水準だったが、2009年2月分では69.5まで大きく低下し、わずか1年間で1983年7月分(69.5)以来約25年半ぶりの低い水準になってしまった。

 鉱工業生産指数の前期比は2009年1〜3月期の速報値で22.1%減と大幅な低下で、初めて2ケタ減少となった2008年10〜12月期を上回り、統計史上最大の減少率を更新した。4四半期連続での減少になる。5月20日発表予定の1〜3月期の実質GDP(国内総生産)第1次速報値では、10〜12月期の前期比年率12.1減に続き、前期比年率2ケタのマイナス成長となった模様だ(関連記事)。しかも第1次石油危機時代の1974年1〜3月期の13.1%減を上回る統計史上最悪の減少率だ。2四半期連続で前期比年率2ケタマイナスは統計史上初めてのことである。こちらも鉱工業生産指数と同じくリーマン・ショックの後、景気が急速に落ち込んだことを示唆しよう。

 しかし、急激に悪化してきた景気にようやく明るさが見えてきた。例えば鉱工業生産指数・3月分速報値は前月比1.6%増と6カ月ぶりの増加になった。電子部品・デバイス工業、一般機械工業、電気機械工業などが増加に寄与した。3月分速報値の出荷指数は前月比1.4%増と、こちらも6カ月ぶりの増加になった。在庫は前月比3.3%減と3カ月連続の減少になった。2月分に158.5と史上最高水準を更新した在庫率指数は3月分速報値では前月比4.9%減で、指数水準は150.7に低下した。2月分までは在庫調整が進む一方で、出荷が急激に低下しているため在庫率の大幅上昇が続いてきたが、在庫の水準はそれほど高くないため、需要さえ出れば生産増に結び付きやすく、在庫率も今後低下傾向になっていくとみられる。

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