「足かせ」扱いの情シス、IT予算減の今こそ熟考の時Gartner Column(2/3 ページ)

» 2009年06月19日 08時00分 公開
[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

 会計システムを例に挙げてみましょう。会計は企業のさまざまなビジネスプロセスと密接に関係しています。例えば「受注から請求」「財務報告」「サプライチェーン」「契約管理」のプロセスなどがあり、数えればキリがありません。しかし、会計システムがこうした数々のプロセスをすべて想定して設計・構築されることはまずありません。会計システムに必要な機能を定義して、設計・構築されています。

 しかし、実態として情報システムは、ビジネスプロセスを実装するために存在しています。実際にプロセスを実行する中で、情報システムに入出力したデータを基に、業務を処理していくのは明らかです。

image 図1:情報システムとビジネスプロセスの関係(出典:ガートナー ジャパン)

 図1をご覧ください。エンドツーエンドのビジネスプロセスの一つ一つから、機能別に構築されたアプリケーションにアクセスしていることをモデル化したものです。線が網目状に飛び交い、とても複雑になっています。企業内のビジネスプロセスと情報システムの関係は、ほぼこのような状況に等しいといえます。

 情報システムが無ければ、業務自体は進みません。しかし情報システムは、社内のビジネスプロセスを実装しているという状態からはほど遠く、単純に処理機能を提供しているという状態にすぎません。

 経営者の多くは、この状況をどう考えるでしょうか。「システムは業務を機械化して合理化・効率化するためにある」と考えます。21世紀の現代において、本当に機械化しなければならない事務業務を機械化できていない企業は少ないです。そうすると、不景気時には情報システムへの投資が不要不急の対象になってしまいます。

image 表1:「2009年EXP CIOサーベイ」の集計結果(出典:ガートナー ジャパン)

 表1は、2008年末に実施した「2009年EXP CIOサーベイ」の結果を集計したものです。この設問は、毎年CIOに尋ねていますが、「あなたのビジネス面での優先課題は何ですか?」という問いに対して回答の多いものから順にランキングとしてまとめたものです。

 この表は、過去のトレンドが分かるように、2006年からの結果を掲載しています。2009年の第1位は、ビジネスプロセスの改善です。これは2006年から不動です。CIOは、ビジネスプロセスの改善がビジネス面における自身の最優先事項であると、5年間も連続して考えているのです。

 そしてビジネス面での優先事項を、企業の経営者からCIOに対する期待事項であると考えてみましょう。この結果はすなわち、5年連続で「CIOはビジネスプロセスの改善に注力してほしい」と言われ続けていることになります。

 CIOがこの課題に一歩踏み出し、自らがリーダーとなってビジネスプロセスの改善に取り組んでいると回答した割合は、全世界では30%にも上りました。驚くことに日本のCIOはこの割合が45%に達したのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆