日本の景気好転、靖国神社の桜がいち早く伝えていた景気探検(1/2 ページ)

まだまだ予断は許さない状況であるが、景気の底打ち感は出てきた。景気回復と桜の開花時期が密接に関係しているのをご存じだろうか。

» 2009年06月25日 08時00分 公開
[景気探検家・宅森昭吉,ITmedia]

 前期比年率マイナス15・2%という2009年1〜3月期の実質GDP(国内総生産)・第1次速報値は、統計史上最悪の減少率になった(編集部注:6月11日にマイナス14.2%に改定)。2008年10月〜12月期に続き史上初の2ケタのマイナス成長だ。昨年9月のリーマン・ショックの後、景気が急速に落ち込んだことを示す数字である。

 景気が急速に悪化し、失業率も5%台に上昇する中で、厚生労働省や警察庁のデータによると昨年9月から今年4月にかけ自殺者数が前年同月を上回っている。厳しい経済環境下、消費者は生活防衛姿勢を強めている。例えば、家計調査によると安くて栄養価が高い「もやし」の購入が増加している。

 このような厳しい身近な数字があるが、明るいデータも出てきている。景気の動きを示す景気動向指数の一致DIが4月分で11カ月ぶりに前月に比べ上昇した。景気一致DIと連動する鉱工業生産は3月分が1.6%増、4月分が5.2%増と2カ月連続の増加となった。さらに製造工業予測指数では、5月分は8.8%増、6月分は2.7%増とさらなる増加が期待されている。生産は増加基調に戻ったと言える。これまでの急激な景気悪化で経済活動水準は相当低く、今後景気遅行指標である失業率の上昇など雇用悪化がまだ続きそうな厳しい展開が予想されるため楽観はできないが、3月を谷とする景気拡張局面に入ったようだ。

 景気動向指数・一致指数採用の11系列をみると、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、稼働率指数、商業販売額(小売業)の4系列が2月に底を、大口電力使用量、所定外労働時間指数、商業販売額(卸売業)、中小企業売上高の4系列が3月に底をつけた可能性がある。今後多少の脱落系列があるとみても、3月までに過半数の6系列以上がボトムをつけ、その後半年にわたり上昇基調を続ける可能性が大きくなった。そのため、谷は3月になるとみられる。交易条件の改善、環境対応車、住宅ローンにかかわる減税やエコポイントなどの政策効果期待、在庫調整進展などが、景気回復の主な要因であろう。

靖国神社の桜の木は知っていた

 身近なデータもこの春を底にした景気回復を示唆している。気象庁の生物観測調査の直近57年間のデータをみると、平年より桜の開花が1週間以上早かった過去8回はすべて景気拡張局面になっている。それ未満は拡張・後退両局面ともある。後退局面だった昨年春は、東京の桜の開花日が3月22日で、平年とのギャップは1週間未満になっていた。桜の開花が早いと春物が早く動いたり、人々の心理面が改善し景気にプラスに働くのだろう。

 今年は3月21日の開花で、もう既に景気後退局面ではないことを示唆していた。その後発表されたデータからは、大きな景気下振れ要因が今後約半年間で出なければ、3月が景気の谷になる可能性が大きいことが確認された。景気後退局面は約1年強で終了になったことを東京の標準木である靖国神社の桜はいち早く告げていたようだ。

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