南アフリカで痛感した「自己責任」の重要性「世界一蹴の旅」からすべて教わった(3/3 ページ)

» 2009年06月30日 11時30分 公開
[ヨモケン(Libero),ITmedia]
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なぜ旅に出るのか

 日本人の多くはメディアの論調一辺倒で、護送船団方式よろしく、皆が同じような意見を持ちがちであり、ムラ社会的側面からも大多数の意見に流されやすい。さらにはメディアの論調自体が、自己責任回避モデルであるため、極端に保守的なものとなってしまう。これで、多くの日本人は、考えることを放棄し、先ほどの「ただひたすら危険」という結論へ至るのである。

 よく日本にいる仲間から「2010年の南アフリカ・ワールドカップは現地に行って見るべきか」との問い合わせを受ける。今回僕らが南アフリカ訪問するにあたっての判断は、以下の方程式を基に考えられている。これは旅全般に適用できる。



 この左辺が大きいとき、つまり、旅から得られる対価が行く場所の危険度より大きい時は、旅に出るようにしている。(1)というのは、例えば、アフリカ初のワールドカップを生で体験できるとか、国立公園に行って野生の動物たちを目の前で見られるとかを指す。その大きさは、人それぞれだが、固定値と言える。

 (2)に関しては固定値だが、(3)+(4)でいくらか除算できる。(3)の個人の特性とは、個々人の性別、体格や言語能力など、まず変えることの出来ない要素、またはすぐには身に付けられない要素を指す。これも固定値である。そこで、(4)の事前の情報収集&対応策のみが、個人の努力によって変えることのできる部分と言えよう。

 今やインターネットを通じて、たくさんのチャネルから多様な情報が簡単に手に入る。大手新聞社や通信社発のニュースから個人のブログまで多岐にわたる。英語ができれば日本のメディアに限定される必要もない。そこから情報を読み解きアクションを検討する。この部分の数値を高めることで、右辺をできるだけ小さくする努力をし、旅の実施検討につなげることができる。

 普段の行動や計画に関しても、このレベルで考え実行に移すことで、自分の行動に責任を持てる。他者への必要以上な依存が含まれていないからだ。周りに頼って生活するのではなく、もっと自己責任型の行動を取るべきである。

 ビジネスの世界でも同様だ。以前、グローバル規模のコンサルティング会社に所属していたこともあり、世界中のビジネスマンと触れ合う機会が多かった。彼らからは、日本人特有の他者に言い訳を求めるような「ゆるさ」は感じられなかった。

「自己責任の上、どうぞ」

ブラジル代表に声援を送るサポーターたち ブラジル代表に声援を送るサポーターたち

 コンフェデ杯の決勝戦。大方の予想を裏切り、米国が2点のリードで前半を折り返す。しかし、アメリカンドリームはそこまでだった。サッカー界のリアリティを米国は無惨にも突きつけられ、自力に勝るブラジルが2点のビハインドをいとも簡単に跳ね返し優勝を飾った。

 現実の世界に目を向ければ、米国のバブルが弾け世界恐慌を招いている。米政府や各国中央銀行などは人々を勇気付けるようなポジティブなコメントを出すが、現実はなかなか厳しい。そんな状況だからこそ、日本のビジネスマンも、これまでのゆるさから脱却し、深く考え、自己責任で世界と戦うレベルになってほしい。

 南アにおいて、よく見かける看板がある。


「at your own risk(自己責任の上、どうぞ)」


 ちょうど1年後、サッカー日本代表がこの南アフリカの地を踏んで世界と戦っている姿を想像しながら、そんなことを考えていた。



 新連載『「世界一蹴の旅」からすべて教わった』では、2010年に南アフリカで開催するFIFAワールドカップを最終目的地に、1年かけて大会出場32カ国を旅するアシシとヨモケン(共に大手コンサルティング会社出身)が、風土や文化、商習慣など世界各国の「等身大」を伝えていきます。


著者プロフィール

アシシ(左)とヨモケン

アシシ:1977年生まれ、北海道出身。大学卒業後、外資系コンサルティングファームに入社。6年勤めた後、ドイツワールドカップ現地観戦を理由に退職。その後、中田英寿の影響を受け旅人デビュー。半年仕事、半年旅人のライフスタイルも2009年で4年目に突入。自遊人布教活動を推し進める血気盛んな31歳。

ヨモケン:1979年生まれ、神奈川県出身。1998年、大学入学直後に日本代表とともに初めてワールドカップ(フランス大会)を体験。2002年、日韓ワールドカップをEnjoyし尽くして、同年、外資系コンサルティングファームに入社。2006年のドイツワールドカップを現地観戦後、同社の中国オフィスへ転籍。人生のマイルストーンをワールドカップイヤーに重ねながら、現在はフリーランスのコンサルタント兼旅人を満喫中。

「世界一蹴の旅」の概要や彼らの日々のブログはこちら



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