企業価値向上経営で“沈没”しない企業の仕組みづくりをITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)

» 2009年09月09日 08時15分 公開
[岡崎勝己,ITmedia]
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“人”を資産化し、その価値を高める

 人はモノや金に並ぶ企業の資産である。ただし、残念ながら日本企業は人を十分には生かしきれておらず、その労働生産性を見ると、従業員1人あたりの粗利益額は平均すると米国企業の7割、小売・サービス業では5割にとどまるという。

 社員1人あたりの付加価値を高める上で社員教育は欠かせず、そのために企業は社員研修の充実に力を入れてきた。加えて、金子氏がその必要性を訴えるのが、個々人のスキルを最大限に引き出すための全社的な仕組みである。

 「共通の目的の下、組織が一丸となって行動を起こせなければ、的確な判断を下すことはできない。この課題を克服するためには、業務フローや役割分担など、社員を管理する仕組みを組織として共有し、企業の理念や将来へのビジョンを“ストーリー”として可視化することが不可欠なのだ」(金子氏)

 これまで、多くの企業で業務の効率化や高度化を目的に、多大なコストを費やし各種システムが導入されてきた。ただし、それらの中には運用を開始してすぐに使われなくなったものも少なくないという。その最大の理由こそ、「ストーリーを社員間で共有できていないこと」(金子氏)。そのために、運用に混乱をきたしてしまうわけだ。

経営トップは腹を据え、具体的なKPIの設定を

 IBMではこうした事態を回避するために、企業がシステムを導入するに当たって、その目的を経営戦略や投資対効果などを基に整理する支援活動を長年にわたって展開してきた。代表的な活動が「経営の筋を通す取り組み」「経営資産を有効活用する取り組み」の2つだ。

 具体的には、まず、顧客を含めた社会との活動を通じて、自社の経営目的と、社会から自社に期待されていることの双方を明確化。その結果を踏まえ、改めて付加価値を最大限に高めることが可能な経営戦略を策定する。そして、組織力を強化するために、経営戦略を事業戦略などに落とし込むとともに、社員の行動の指針として数値目標をKPIとして設定するのである。

 「KPIには貸借対照表や損益計算書のあらゆる数値を用いることができる。総資産回転率と利益率のどちらの向上に重きを置くにしろ、見るべき数値は必ずブレイクダウンできる。例えば、売上目標から客単価と客数を算出でき、その結果と現状を比較し、いくら客単価を挙げることが必要とされ、そのために何を行えば良いのかを考えることができるわけだ」(金子氏)

 実のところ、経営目標を各部門で個別に数値として捉えることができている企業は、現実的には少ないのが実情だ。その実現にあたって欠かせないのが、経営トップのリーダーシップである。

 「理想を現実の数値に落とし込むと言葉で言うのは容易だが、実現は極めて困難。当然ながら腹をくくって作業にあたらなければならない。だが、それを実現した暁には経営資産を有効活用するために、さまざまな角度から施策を検討することが可能になる。その重要性を経営者は改めて認識すべき時期に差し掛かっているのだ」(金子氏)

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