不況期だからこそできることがある生き残れない経営(3/3 ページ)

» 2009年09月18日 07時45分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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不況期こそ前向きに考える

 こうして好業績の企業の例を見ても、企業体質強化の施策に何ら目新しいことも画期的なこともない。なぜ彼らは成功するのか。そこには共通した経営理念が読み取れる。それを読み解く前に、施策について実務面から気付き事項に触れておこう。

 在庫縮減は、通常そう簡単にできない。なぜなら、在庫の中に長期不良停滞在庫が潜んでいるからだ。この死蔵品に多くを占められて、在庫の縮減が思うようにいかないものだ。本来は好況時にこれを整理償却しておくべきだが、それもなかなか手つかずである。死蔵品に邪魔されて在庫縮減がままならないのなら、せめて不況期に死蔵品を徹底して整理し、その内容を明確に把握しておき、償却できる次の好況期に備えるべきだ。

 また、コスト削減を目的に海外生産に移管する場合、品質の確保には十分過ぎるほどの注意を払うべきだ。これは筆者の経験上からも言えるが、海外の技術指導・品質確保指導には、経費も時間も人も惜しむことなく、徹底してつぎ込むことを決して厭うべきでない。

 最後に、教育である。不況で時間ができたから従業員教育をすべきだと、万遍なく取り掛かっても無意味だ。当社の何が足りないか、どの部分を強化すべきかを十分検討して認識した上で、必要な対象に必要な教育を実施しなければならない。しかも、人の教育は一過性ではなく、この機会に教育が企業文化として定着するまで本腰を入れるべきだ。

 以上のような例から、好業績企業の共通点して読み取れることは、「不況期にこそ、新製品開発、体質強化を」という前向きの考えになることである。そのためには、日ごろからの考え方と実行の積み重ねがいかに重要かということになる。そこには、「本気で取り組んで、徹底してコミットメント」するトップの覚悟がある。

 加えて、確固たる経営理念があることだ。キヤノン電子の「環境」、ニトリの「継続的な値下げ宣言」、坂戸工作所の「不況でも人員は削減しない」、三信精機の「ものづくりはひとづくり」などが、全社員の支えとなっている。すべてがここから出発し、あらゆる困難に突き当たったとき、ここに戻る。特に経営体質強化の対策として、月並みなことを根気よく進めなければならないときこそ、よりどころとなる経営哲学が必要となる。


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著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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