欧州随一の指導者に学ぶ――「モウリーニョの流儀」経営のヒントになる1冊

選手として名声を得ることはなかったが、サッカー監督としていくつもの輝かしい功績を作り出し、ついにはヨーロッパ最高峰まで登りつめた若き指導者・モウリーニョ。彼のリーダーシップから学ぶべき点は多い。

» 2009年10月24日 12時20分 公開
[ITmedia]

 「わたしは自分が世界一の監督だとは思わない。しかし、私以上の監督がいるとも思わない」――。これはジョゼ・モウリーニョがイタリアのサッカーリーグ・セリエAのインテルナツィオナーレ・ミラノ(インテル)監督に就任して間もなく、イタリアのスポーツ紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の取材で発した言葉である。

『モウリーニョの流儀』 著者:片野道郎、定価:1680円(税込)、体裁:254ページ、発行:2009年9月、河出書房新社 『モウリーニョの流儀』 著者:片野道郎、定価:1680円(税込)、体裁:254ページ、発行:2009年9月、河出書房新社

 モウリーニョは今や世界のサッカー界において最も注目を集めている指揮官といえよう。そのキャリアは華々しい。2000年に自国・ポルトガルの古豪チームであるベンフィカで監督としてのキャリアをスタートさせたモウリーニョは、その後、2001年にウニオン・レイリア、2002年1月には当時不調にあえいでいたFCポルトに引き抜かれ、リーグ途中からの指揮にもかかわらず最終的に3位にまで順位を押し上げた。2002年/2003年シーズンは、国内リーグ、ポルトガルカップ、そしてUEFAカップで優勝し見事三冠を達成する。快進撃は止まらず、翌2003/2004年シーズンには、国内リーグ2連覇に加え、ヨーロッパサッカーの最高峰であるUEFAチャンピオンズリーグを制覇する。

 輝かしい功績を引っ提げて、モウリーニョは英国にわたる。2004年/2005年シーズンからはプレミアリーグのチェルシーで指揮をとり、リーグ優勝、リーグカップ優勝、FA優勝といった結果を確実に出していった。

 本書は、その後2008年にチェルシーからインテルの監督に就任してからの1年を追った1冊だ。欧州強豪クラブで結果を出し続けてきた名将は、いかにしてイタリアを征服したのか。一挙手一投足が注目されるモウリーニョの饒舌な発言を基に、イタリア在住14年の日本人ジャーナリストが適確な分析を行っている。

 モウリーニョ流のマネジメントは実にシンプルである。規律を重んじてチームのルールを徹底する。その1つが「遅刻」だ。例えば、練習やミーティングなど決められた集合時間に1分でも遅れようものであれば、激しく非難し、厳重な制裁を下す。たとえ、チームのオーナーやレギュラー選手であってもだ。実際に、インテルのエースストライカーだったブラジル代表選手のアドリアーノは規律違反によりスタメンを外されることとなった。

 一方で、試合の勝敗に関しては、勝てば選手たちの働きを大いに称え、負ければすべて監督自身の責任だとすることで、自分に対しても厳しい環境を作り出しているのである。

 強い組織を作り上げるために必要なものは何か。リーダーとしてのあるべき姿とは。分野は違えど、企業の経営者たちがこの若き指導者、モウリーニョから学ぶべきことは多いのだ。


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