「メイド・イン・チャイナからの脱却」――大宇宙信息創造・中山董事長世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/2 ページ)

» 2009年11月27日 08時15分 公開
[聞き手:伏見学,ITmedia]
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日本文化が浸透

――アウトソーシングサービスに関して、コストだけで考えるとインドやベトナム、タイといった地域の企業とも競合してきます。その中で中国、さらには大宇宙が選ばれる理由は何でしょうか。

中山 インドは欧米企業のアウトソーシング先として20年以上もビジネスに携わってきた歴史があり、ITの技術やマネジメントのレベル、会社の規模などでは世界でも群を抜いています。ただし、インド企業の実績は米国およびヨーロッパの顧客がほとんどで、文化や言葉、距離的な問題などから日本向けのビジネスはあまりうまくいっていません。

 ベトナムは数年前から注目されており、現時点では中国の半分以下のコストでサービスを提供できると聞いています。問題はアウトソーシング企業の絶対数とエンジニアの数が足りないことです。大規模システム開発の実績は少なく、中国より経験は浅いでしょう。大半の技術者は英語ベースで仕事するため言葉の壁もあります。

 中国はインドと比べて平均的に7、8割のコストでオフショア開発できるほか、日本と文化的な背景が近いことも利点でしょう。大宇宙の強みは、日本向けのビジネスだけに経営リソースを集中しているほか、日本資本が100%入っているため日本文化が隅々まで浸透している点です。日本語についてもしっかりとした教育体制を構築しているため問題ありません。


――社員は入社時点で既に日本語能力が高いのでしょうか。

中山 新卒採用の段階では日本語能力は問いません。事務職では日本の大学を卒業した人も一部いますが、技術者は技術力で採用しているため日本語が分からない人は少なくありません。

 ただし日本語ができないと仕事にならないので、内定から入社までの約1年間は社内研修などで日本語の学習を徹底します。入社までに日本語の国家試験3級以上のスキル習得を義務付けており、それ以下のレベルであれば内定取り消しもあります。

 入社後も日本語の専門教育を行います。プログラマーに関しては、最低限仕様書を読めれば仕事ができるため、日本語未経験の人でも半年程度で業務に入れるようになります。


――日系企業が中国人社員をマネジメントする上での難しさはありますか。

中山 日本は品質管理やサービスなどにおいて優れた面をたくさん持っています。しかし日本流のマネジメント方法をそのまま中国に持ち込んでも反発されます。日本では上司に「黙ってついて来い」と言われれば部下はついていきますが、中国ではそれが通じません。明確な目標や行動理由を示して、社員がこの仕事は自分のためになるのだ、頑張れば結果が出るのだと納得してはじめて一生懸命働いてくれるのです。

 意識の統一を図り社員を同じ方向に向かせるためには、日ごろから社員との交流は欠かせません。

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