連載
» 2009年12月02日 11時00分 UPDATE

【対談連載】石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」:「模倣されない仕組みをつくれ」――早稲田大学大学院・根来教授【後編】 (1/2)

企業が競争優位を保つ要素の1つに、模倣が困難な経営資源を持っているかどうかがあります。ここでは、米国のサウスウエスト航空や、日本の人材派遣会社であるスタッフサービスを例に分析してみましょう。

[石黒不二代(ネットイヤーグループ),ITmedia]

模倣されない企業

 差別化が競争優位となる際に必要なのは、模倣が困難であることです。これは伝統的には経営資源と考えられてきましたが、この考え方は実務レベルでは狭義過ぎます。資源に企業活動(活動システム)を合わせて差別化の仕組みをつくるべきという理論が最近の主流です。

 模倣困難な経営資源の例としては、技術やノウハウを挙げると分かりやすいでしょう。模倣困難な活動とは、ほかの会社から見たときにやりたくてもできないような活動を指します。よく教科書に出てくる例としては、米国国内線のチャンピオンであるSouthwest Airlines(サウスウエスト航空)があります。同社は利益創出に苦しむ米国の航空業界において利益率の高さで有名な企業です。

 この会社が持続的に高利益率を確保しているのは、実は、国際線に参入しないからです。同社の所有する飛行機はボーイング737が500機ほどです。この1種類だけという、資源としては他社に劣っているともいえる事実が活動の効率性を高めているのです。整備活動をこの飛行機に特化して熟練しているので、整備時間が約15分しか掛かりません。ほかの航空会社は、さまざまな種類の飛行機があるため整備のマニュアルが複雑になり、平均の整備時間は40分程度です。整備時間が短いと折り返し運転のインターバルを短縮できるため、飛行機の稼働率が高くなります。その結果、固定費が安くなるという構図です。

 このケースでは、資源としてのボーイング737が模倣困難なのではなくて、多頻度運行する活動とボーイング737だけを保有するという活動(方針)のセット(仕組み)が模倣しにくいのです。ほかの大手航空会社が模倣しようとすれば、国際線をはじめ多様な路線に対応すべく複数タイプの飛行機を持つという自分を否定しなければなりません。

 このように、大企業がやりたくても模倣できない例は日本にもあります。最近リクルートに買収されたスタッフサービスはスピード重視のサービスに対して2つのコミットをしています。採用側の企業から問い合わせが来て25分以内に営業マンが訪問する、オーダーが出たら派遣する人を24時間以内に紹介するというものです。この2つのコミットはさすがに他社ではできそうにありません。それを可能にしているのは、スタッフサービスが一般事務に特化しているからという側面があります。一般事務であれば被雇用者に必要とされる能力もある程度標準化されたものになり、登録スタッフを紹介しやすくなります。技術者の採用となれば個別の詳細要件をヒアリングするために本社に訪問しなければなりませんが、一般事務であれば事業所への訪問で事は足ります。一般事務に特化した場合、バックエンドを支える情報システムも比較的シンプルな構成になるでしょう。

 スタッフサービスの場合、市場を限定していることがスピード面での優位性につながっているのです。しかし、一般事務に特化した派遣会社がすべてスタッフサービスのようなスピードを持っているわけではありません。スタッフサービスは、時間を掛けて自分にふさわしい「模倣困難な<ノウハウと活動の仕方>のセット=仕組み」を作り上げてきたのです。

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