迷走する鳩山政権藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

政権交代を歓迎する「ハネムーン期間」を過ぎ、支持率が急落している鳩山政権。日米外交、暫定税率、デフレなど課題は山積だが、いまひとつ首相の決断力が欠けているのだ。

» 2010年01月06日 12時30分 公開
[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

 政権交代を果たして日本の政治を変えるという期待を一身に背負ってスタートした鳩山政権だというのに、発足後100日を過ぎて支持率が急落している。一部の世論調査ではとうとう50%を切ってしまった。理由ははっきりしていると思う。政治資金問題などはあまり関係がない。要するに、鳩山首相の決断力・判断力に大きな疑問符がついているのである。

 普天間問題でそれが最も顕著に表れた。現行案の実行を求める米国側に対して「トラスト・ミー」と応じれば、それは「国内の反対を説得して辺野古への移設を行う」というように受け取られるのが普通だと思う。その結論を出さずに先延ばしした揚げ句、コペンハーゲンで会ったクリントン国務長官に「説明して理解していただいた」という発言をすれば、米国側が釘を差したくなるのも当然である。国務長官が「理解を示した」ということになれば、それは米国の政策変更になる。自分の都合の良いようにクリントン長官の意向を「忖度」したとしか見えない。

 普天間基地移設問題は、日米同盟のあり方をめぐる象徴的な問題ともなりつつある。鳩山首相はもともと「常時駐留なき安全保障」という考え方をもつ。小沢一郎幹事長はかつて「日本の安全保障には米第7艦隊がいれば十分」と言って物議を醸したこともある。要するに日本に駐留する米軍は少なければ少ないほうがいいということかもしれない。

 しかしここには、それでは米軍が抜けた後、自衛隊が肩代わりするのかどうかという議論が抜けているとも思う。もし自衛隊米軍の機能を少なくともある程度は肩代わりするというのなら、沖縄の米軍基地もすべて民間に変換されるわけではなく、自衛隊が使うということになるのかもしれない。それはそれで沖縄では大きな問題になるだろう。さらに自衛隊に欠けている能力、例えば、航空自衛隊の地上攻撃能力や空中給油能力を強化するという話になるのだろうか。しかしこういった枠組みも考えるということになれば、それは2010年の5月とかいう話ではあるまい。

中国へシフトする動き

 その一方で小沢幹事長が600人も引き連れて中国を訪問したり、中国の習近平副主席が訪日した折りに、強引にねじ込んで天皇会見を実現したりということが重なると、日本は外交の軸足を移しつつあるのかということにもなる。

 鳩山首相も就任早々、東アジア共同体構想をぶち上げた。どの程度のことまで構想しているのかよく分からないところもあるが、欧州のように物や人、カネの移動の自由化からさらに共通通貨までも構想するのであれば、そう簡単な話ではない。中国の政治体制の違いも考えなければなるまい。まして中国の人口は日本の10倍、しかも日本の人口は減少する方向にあり、人口格差は開くばかりだ。その国と簡単に「共同体」を構成するというのは考えにくい話である。このあたりを鳩山総理がどのように考えているのか、どうにもよく分からないのも国民に不安を与えていると言うべきだと思う。

 国内では、民主党の小沢一郎幹事長が、子ども手当の所得制限やら暫定税率の維持といった民主党のマニフェストについて方針転換を申し入れた。党と政府の二重権力とかいろいろ言われるが、決断できない内閣に業を煮やして予算の形を示したと考えるのが最も筋が通る。税制や予算についていつまでもぐずぐずしていれば、支持率がますます落ちるのは目に見えているからだ。

 小沢幹事長にしてみれば、自分が政策の表舞台に出て行くことで、批判を浴びることは覚悟の上だっただろうと思う。そのリスクと、支持率がさらに下がって来年の参議院選で勝てないリスクとを考え合わせて、支持率が下がることは何としても食い止めなければならなかった。参議院選で負ければ、昨年8月に総選挙で大勝した意味が薄れてしまうからである。

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