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» 2010年02月01日 08時00分 UPDATE

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:協働――日本企業が復活させるべき競争力の源 (1/2)

日本企業の現場力の基本は助け合いの精神である。クラウドコンピューティングは、現場力をグローバルな舞台に広げてくれる。日本はもう一度、助け合いの精神に立脚した強い現場を取り戻すべきである。

[中島洋,ITmedia]

クラウドが実現する国境を越えた「見える化」

 世界に通じる日本の強さはどこにあったのか。日本社会の底に流れる「助け合い」の精神ではなかったか。もちろん、どのような事象にもプラスとマイナスの側面があるので、取り扱いには注意が必要だ。だが、稲作農業を実践することによって、長い間に人々の心の底に価値観として定着した助け合いに基づく共同作業の伝統が、現場力として結実して、60年代から70年代にかけての奇跡的な日本の成長を実現したのではないか。協力し合いながら共同作業を行うことを「協働」と表現する動きがあるが、まさに、協働こそ、日本企業が復活させるべき強さの源である。

 その現場力を高度に発達した情報通信技術は、国際的な事業展開の中で、新しい形で発揮させることができるのではないか。世界で勝つ日本企業を作るためには、この協働の精神を維持した経営システムを構築することが求められる。

 日本の製造業の強い「現場力」は何によってもたらされたのか。早稲田大学大学院の遠藤功教授が概念として見事にまとめた「見える化」も、その大きな要因だったことは確かである。クラウドコンピューティング時代にも見える化が重要なヒントになる。

 さまざまな側面がある見える化を、この記事の文脈に合わせて整理すれば、1.現場において、各構成員が自分の持ち場だけではなく絶えず全体を見渡せる職場環境を作り出す、2.トラブルを抱えている構成員を見つけると、余裕のある構成員や経験のある構成員が駆けつけてトラブルを解決する――という2つの要素がある。

 このうち1.の要素だけをITで実現したのがグループウェアである。しかし、グループウェアは見える化とは違う形で発展した。グループウェアは、ネットワークによって組織部門内の情報流通を円滑にし、部門内の情報や知識の共有化を促すものだった。業務決裁のスピードアップも実現し、情報の流れを阻害する部署を浮き彫りにして工程を簡素化するという、業務革新のメリットもあった。

 その後、グループウェアは次第に業務のスピードアップ、コスト削減、合理化の道具として成果を上げる側面が強調され、その道具として価値をもつようになった。

 日本流の見える化を経営視点から見れば、単に情報を共有化し、知識のデータベースを充実させても、「現場力」にはつながらない。合理化が目標であり、そのための道具という性格に偏ってしまったグループウェアは、日本の経営組織の中では落第点である。助け合いの精神を伴わないグループウェアは、形はできても、それを突き動かす精神が未熟である。「仏作って魂入れず」の典型ともいえる。

 日本流の見える化は、チームの構成員の誰が何をしているか、それぞれが漠然とながら全体を理解して作業を進めるという基礎がある。どこかでトラブルが生じた際に、経験のある仲間たちがそこに駆けつけて手を貸し、知恵を貸し、助言をして、トラブルから脱出させる。全体の結束で解決していくところに意味があるとされる。グループウェアの背後に協働、すなわち助け合いの精神が働いていないと、見える化は重要な価値を実現できない。協働は、日本式経営の競争力の源泉である。

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