「2つのIT変革」で顧客のビジネス価値創出を支援する――NTTデータ・山下社長(2/3 ページ)

» 2010年02月05日 08時30分 公開
[河原潤(ジャーナリスト),ITmedia]

Innovation by IT

 上述したような経済環境の変化に加えて、ユーザー企業のITに対するニーズも大きく様変わりしている。山下氏によると、これまで企業でのIT活用の主な目的といえば、業務の効率化や内部統制のような「内向き」のものがメインであったが、近年では、ユーザー企業のIT活用に対する考え方が成熟化し、「外向き」のITに対する期待がより高まっているという。

「例えば、新商品を他社に先駆けていかに迅速に投入していくか。あるいは、業界のパラダイムシフトに対応し、自社で新しいビジネスをいかに展開していくか。こうした外向き、戦略的なIT投資の考え方がようやく日本においても定着しつつある」(山下氏)

 ただし、グローバルでの競争の時代を迎えた今、日本企業はもうワンランク上の戦略的ITに進む必要があるとしている。

「日本企業が得意とするカイゼンは引き続き重要だが、今、カイゼンに加えて必要なのは、ITの活用による変革、すなわちInnovation by ITである。当社はInnovation by ITのためのソリューションを提供することで、顧客企業がITを活用してビジネス価値を創出していくことを支援したい」(山下氏)

 山下氏は、顧客企業のInnovation by ITの支援にあたってNTTデータが注力するのは、「急激な変化への対応力向上」「グローバル最適の実現」「パラダイムシフトの実現」の3つであるとし、それぞれについて説明した。

 急激な変化への対応力向上については、変化に追いつくことへの対応よりも、今後は、急激な環境変化の中で変化を先読みすること、さらには自ら変化を作っていくことが求められるという。

「従来のITシステムでは、POS販売データを参考に流通在庫を減らしたり、生産量を調整したりといったように、システムのパフォーマンスを管理して業務効率化のための情報をもたらすことが主に期待されていた。一方、今後のITシステムでは、製造より前のプロセスに情報をフィードバックするような役割も求められるようになる。その際、企業は、製品を開発・製造して流通させ、販売してしまえば、後は売り切ろうが売れ残ろうが追加生産などの調整を行わない。それよりも、次の製品開発に向かって変化を先取りしていくといった動きをとることになる」(山下氏)

 グローバル最適は、グローバル企業にとっての共通課題として昨今定着しつつある考え方だ。ここでは、海外拠点設立のたびにシステムを立ち上げ、独自のルールで運用するという個別最適の状態からの脱却が求められている。山下氏は「個別最適の状態では、本社が経営にまつわる情報を統一的に入手できないので、的確な意思決定の判断を行えない。グローバル最適に向かうアプローチとして、業務の共通化や可視化、KPI(重要業績評価指標)の定義などによる業務プロセスの標準化が必要となる」と説明する。このグローバル最適に対する解として、NTTデータは、各拠点で必要な現地オペレーションの支援も含めた「グローバルサポートモデル」を提供している。

 パラダイムシフトの実現(ビジネスモデルの変換)については、中古本・CD/DVD販売のブックオフオンラインの事例が紹介された。同社はシリーズものの中古本を全巻一括して購入したいという「オトナ買い」のニーズをとらえて、店舗のみでは不可能だったサービスをオンラインにより実現している。

 「オトナ買いサービス」のサービス概要はこうである。ある中古の漫画作品全20巻を一括して購入したいが2巻と4巻だけ在庫が切れている。この場合、従来なら顧客が個別に取り寄せるしかなかったが、ブックオフオンラインは、書籍取次店とのオンライン連携によって古書在庫と新刊在庫の自動引き当てを実現し、欠巻分を新刊で補って全巻をそろえて手軽な値段で販売するという仕組みを構築している。このサービスを各店舗で開始したところ大好評を博し、来客数の増加にもつながったという。ブックオフオンラインの試みは、相対するビジネスモデルを補完関係に変換するというパラダイム・シフト/イノベーションの好例であると言える。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆