「2つのIT変革」で顧客のビジネス価値創出を支援する――NTTデータ・山下社長(3/3 ページ)

» 2010年02月05日 08時30分 公開
[河原潤(ジャーナリスト),ITmedia]
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Innovation of IT

 ITを活用して顧客に変革を促す声はよく聞かれるが、一方、IT自体の変革についてはどうか。山下氏は「ITの提供側である当社も反省しているが、Innovation of ITへの取り組みは、とりわけ日本では遅れていると言わざるをえない」と語り、この取り組みは今後の日本のIT業界全体の課題であると強調する。

 Innovation of ITの推進でNTTデータが目指すのは、導入が迅速で、かつ環境変化に柔軟な「スピードと柔軟性を両立したIT」の提供である。それを実現するための技術/製品として、山下氏は、クラウドプラットフォームの「BizCloud」、システム構築の「倍速開発」、SOA(サービス指向アーキテクチャ)およびBPM(ビジネスプロセス管理)をベースにしたアプリケーションスイート「Biz ∫(インテグラル)」の3つを紹介した。

 BizCloudは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのそれぞれの長所を取り入れた「バーチャル・プライベート・クラウド」として提供される。NTTデータならではの特徴と言えるのが「コミュニティ・クラウド」と呼ばれる、特定のグループのみで利用可能な共同利用型のクラウドシステムだ。

 山下氏は次のように説明する。「コミュニティ・クラウドは、銀行の共同センターを長年運用している当社だから提供できるクラウドの選択肢の1つ。顧客企業にはさまざまな種類のクラウドをうまく使い分けていただきたい」。

 また、クラウドのための設備やリソースを提供だけにとどまらず、クレジットカード決済のCAFISのようなビジネスインフラや、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やコンタクトセンターとの連携も視野に入っているというのがBizCloudのセールスポイントとなる。

 Biz ∫は、SOAとBPMを基盤とする統合アプリケーションスイートで、NTTデータが従来のERPパッケージの欠点を解消した「SOA型ERP」「ユーザー中心型ERP」であるとアピールする製品だ。

「BPMの仕組みにより、システム処理と作業、作業と作業の連携に生じる待ち時間のムダを“見える化”し、業務プロセス全体の継続的な見直しを容易に行えるようにする。また、SOAの採用により、業務のニーズに応じた、システムの柔軟な変更が可能になる上、サードパーティー製の各種業務アプリケーションも連携させることができる」(山下氏)

 倍速開発は、スクラッチ開発の期間を従来の半分に短縮することで、パッケージ製品の導入に要する期間とほぼ同じぐらいで、顧客企業がシステムの利用を始められるようにすることを目指した、NTTデータ独自のシステム開発スローガンである。

「当社のコアコンピタンスとなるシステムなので、やはりスクラッチ開発でといった顧客企業のニーズに対し、パッケージの導入とほぼ同じ開発期間で応えようという取り組みだ」(山下氏)

 NTTデータは、倍速開発を実現するための7つの取り組みとして、「開発の自動化」「開発環境クラウド」「CCP(クリティカル・チェンジ・プロジェクト)マネジメント」「Wプロセスモデル」「要求モデル再利用」「24時間開発」「上流品質強化」「開発自動化」を掲げている。

 最後に山下氏は、NTTデータが全社を挙げて推進する環境志向経営の軸となるコンセプト「Green IT Orchestration」について説明して講演を締めくくった。

「環境負荷低減という社会的要請に当社が応えていくことに加え、顧客企業の取り組みにおいても、環境負荷情報の可視化など、ITサービスの視点からその要請に応え、持続可能な社会の実現に貢献していく」(山下氏)

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