勝ち残る企業のための“不老チャート”ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2010年03月11日 08時15分 公開
[新将命(国際ビジネスブレイン社長),ITmedia]
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経営者がすべき4つのこと

新将命著『経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目』(ダイヤモンド社) 新将命著『経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目』(ダイヤモンド社)

 勝ち残る企業の原点としての経営能力とは何か。これは 理念、目標、戦略の3つでほぼ説明できる。

 理念の中身は3つある。ビジョン、使命感、価値観である。わが社はゆくゆくはどんな会社になりたいか、誰のために何をすればより役に立つ会社であるのか、経営するにあたり何を大切と心得て考え行動するのか、という共通の理念が組織の中に浸透して実行に反映されている会社には判断や決断の上で大きなブレが生じることはない。一枚岩としての一体感が生まれる。全社員の心を1つに結ぶ求心力としての理念があるから、生産性は向上し業務効率は高まる。理念とは企業にとっての魂である。

 概念(コンセプト)としての理念に数字を加えると目標が生まれる。売り上げ、利益などの短期、長期の目標である。

 目標を達成するための大枠としてのやること、やり方のことを戦略という。平たく言えば儲かる仕組み、英語で言えばビジネスモデルということになる。戦略を具体的に現場に落とし込んだときに、戦術が生まれる。経営者は戦術を理解している必要はあるが、自分でやることではない。

 以上を踏まえて経営者がやらなければならないことを分かりやすく示すと次の4つになる。


(1)今どこだ?(全社員に会社の現状をハッキリと認識させる)

(2)どうなりたい? (理念、目標)

(3)何をどうやる?(戦略、戦術)

(4)どうなった?(PDCAサイクルのC、事後評価と改善策)


 ここで警告を1つ。多くの経営者は、よほど気を付けないと社員に対して目標、それも短期目標と目先の方策としての戦術だけを示して目標達成を強いるということになりかねない。経営者としての本来の仕事であるべき理念を語らず戦略を示さないままに短期目標だけを追求してむちを振れば、社員は遮二無二仕事をしてそれなりの成果は挙げるかもしれない。だが、理念と戦略が不在のままでは社員は早晩精神的な制度疲労を起こしてしまう。疲労感、疲弊感、閉塞感を覚えるようになる。

 今どこだ? どうなりたい? 何をどうやる? どうなった? これこそが勝ち残る企業をつくるための原点としての経営者品質の要である。

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著者プロフィール

新将命(あたらし まさみ)

1959年、早稲田大学卒業。同年にシェル石油株式会社入社。1969年、日本コカ・コーラ株式会社に入社しブランドマネージャー、関西営業部長、市場開発本部長などを歴任。この間、2年半にわたり、コカ・コーラ カンパニー・オブ・カルフォルニアに勤務し、マーケティングを担当する。1978年にジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社入社。常務取締役、専務取締役を経て、1982年に代表取締役社長に就任。

1990年に株式会社国際ビジネスブレインを設立、代表取締役に就任。1992年、日本サラ・リー株式会社代表取締役社長に就任。1994年、サラ・リーコーポレーション(米国総本社)副社長に就任。1995年、日本フイリップス株式会社代表取締役副社長に就任。1999年、株式会社日本ホールマーク代表取締役社長に就任。2003年に住友商事株式会社のアドバイザリーボードメンバー、株式会社イースクエア取締役、株式会社やまと取締役。2009年、株式会社セルム顧問に就任。

著書は「社長で成功する人 会社を伸ばす人」(経済界)、「リーダーシップの技術がみるみる上達する」(日本実業出版)など多数。


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