最高の報酬で組織が生まれ変わるビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

「この会社で働いてよかった」、「この人たちと仕事ができてうれしい」。このように思える社員がどれだけいるだろうか。こういった人間が増えることで組織力が向上する。

» 2010年03月25日 12時00分 公開
[石田淳(行動科学マネジメント研究所),ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


非金銭的報酬で「望ましい行動」を増やす

 最高の報酬とは金銭のことではない。お金以外の報酬、非金銭的報酬を活用して、会社にとって「望ましい行動」を増やし、確実に業績につなげていくものである。

 人間は、お金だけで動くのではないということを早くから提唱してきた。「トータル・リワード(total Reward)」と呼ばれる報酬の考え方である。金銭では得ることができない「報われ感」を報酬として与えるシステムを構築していくことを意味している。報われ感などというあいまいな表現では非科学的であると思われそうだが、これは行動分析学という学問の一分野「応用行動分析」を土台にした「行動科学マネジメント」に基づいている。ここでは人間の行動に着目しており、行動の集積がビジネスの結果を生み出すという考え方である。業績につながる行動をした人に報酬を与え、その行動を繰り返すように仕向ける。

 これは、結果を出した人に金銭的報酬を与える成果主義を意味するのではない。行動科学マネジメントは、行動自体を評価している。そこが根本的に違う。ここでいう報酬とは、非金銭的報酬のことだが、具体的にABCDEFの6つの非金銭的報酬を与える方法を紹介したい。

A(Acknowledgement)感謝と認知

 経営者と従業員という主従関係ではなく、仕事の大切なパートナーとして認知し常に感謝すること。その人がいてくれてうれしい、頼りにしているという態度を具体的に示すことが重要。

B(Balance of work and life)仕事と私生活の両立

 暮らしを充実させたいために人は働くものである。勤務形態などフレキシブルに対応する。組織の活動を優先して社員の私生活を無視してはいないだろうか。特に、有能な女性社員を活用する上では欠かせない要素である。

C(Culture)企業文化と組織の体質

 組織に所属する者が誰でも自由に意見やアイデアを述べることができ、役職や立場を超えて認め合い、ねぎらい合える連帯感があるかどうか。社内間の意思疎通がスムーズな社風であることも大切な要因である。

D(Development[Career/Professional])成長機会の提供

 有能な人材ほど成長意欲が高い。社員が成長するためのシステムが制度化されているだろうか。セミナーや研修会に参加する費用や時間を与えたり、資格の取得をサポートするなど個人の才能を伸ばす機会を設けたい。

E(Environment[Work place])労働環境の整備

 労働する場所の立地や居心地は、重要な問題である。通勤が便利な場所にあり、清潔で快適なオフィス、機能的な設備、「望ましい行動」を増やすための環境が整っているだろうか。

F(Frame)具体的行動の明示

 結果を出すために、誰が、何を、どのように、いつまでにすべきかを正確に示すことができているか。正しい仕事の進め方を誰もが分かっているか。また新人に教えることができるか。


 AからFの要素は、人間は「お金以外の快適さ」「お金以外の報酬」を所属する組織に求めているということを表している。少しでも高いパフォーマンスを引き出すためには、これらの非金銭的報酬の提供が不可欠なのだ。

トータル・リワードは、従来の賃金や福利厚生といった金銭的報酬に、AからFまでの非金銭的報酬をプラスしたものを言う。

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