企業における情報システムの役割が変化しつつある。生産リードタイムの短縮などの業務的効果を狙うものが主流だ。そのとき舵取り役としてのCIOは何をすればいいのか。
経営における情報システムの活用目的が事務処理における手作業の効率化、省力化から、サプライチェーンのような部門横断的な業務プロセスのリードタイム短縮やコスト削減、業務の可視化によるリスク低減、コンプライアンス向上といった事業遂行に不可欠かつ競争優位にも直結したものになってきました。
それにつれ、情報システム構築・運用の責任者とは別に、経営層の一員として、情報化投資の責任をもつCIO(最高情報責任者)の必要性が高まり、今では75%(注1)の企業が専任の役員としてCIOを設置しています。IBMではCIOの経営に対する提供価値として、1.イノベーションの具現化、2.ITの投資対効果最大化、3.ビジネスへの貢献拡大であると考えています。
このような背景の中、IBMが全世界の企業および公共機関の2500人以上のCIOに対面調査したIBM Global CIO Study 2009の結果、ビジネス成長とCIOの行動特性(図1)との間には有意な相関関係があることが検証できました。
調査結果の詳細は「世界のCIOに聞く- Global Chief Information Officer Studyからの洞察」(注1)を参照いただくとして、その行動特性は以下の3点に集約できます。
上記のようにCIOがビジネスのイノベーションに積極的に貢献する動きが全世界、ほぼあらゆる業種で本格化したのは2000年に入ってからで、日本でも業務プロセス改革のリーダーとしてのCIOの取り組みが各種メディアでも頻繁にとりあげられるようになりました。昨年のCIO Studyでの調査結果からも、多くのCIOのみなさんが業務プロセスの全社レベルでの刷新や情報の透明性向上、情報基盤の統合に取り組んでいることが分かりました。
では、今後不確実性が増大した経営環境においてCIOは新たにどのような課題への取り組みが求められるでしょうか。前回提示した3つの観点で必要な対応を述べたいと思います。
欧米先進国中心の世界経済から中国、インドをはじめとした新興国の存在感が増大したグローバル経済環境においては、世界のある国で発生した問題が、瞬時に世界中に波及することを意味します。これにより、早くから世界中に進出してきた日本の企業も、先進国の事業拠点に比べて整備が遅れている新興国の拠点の情報基盤を先進国並みにレベルアップする必要があります。
具体的には現地の業務プロセスの標準化や情報の透明性向上が必要です。例えば生産プロセスは海外進出と同時に日本のプロセスを導入定着化していますが、販売・物流プロセスは進出先の市場に合わせたやり方をとっている場合が多く、標準化があまり進んでいないのが実情です。しかし、これからは、従来、現地任せにしてきた業務ルールや情報の意味定義などを標準化し、グローバルで共通の尺度でビジネスの状況を可視化できるようにする必要があります。
一方で、先進国の拠点であっても、ビジネスの実態把握は自社の生産や販売などの拠点までで、その先の代理店や顧客、取引先の状況までは詳細には把握できていないケースが一般的です。そのため、市場での需要の急激な変化の実態を把握するタイミングが遅れ、対応が後手に回った経験を多くの企業がしています。
その意味で、新興国の業務プロセスの底上げと同時に、先進国も含めて、顧客視点・取引先視点で、変化をいち早く察知できるような業務プロセスの見直しが必要になります。CIOが経営層とこの変化の意味を共有し、連携して、業務プロセスおよびマネージメントを見直し、目指す姿と現状のギャップを見極めつつ、最短での実現が可能な実行計画と推進が求められます。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授