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» 2010年05月03日 09時11分 UPDATE

藤田正美の「まるごとオブザーバー」:劣化する政治

鳩山内閣の支持率が2割を切ろうとしている。内閣発足時は7割近い高水準でスタートしたにもかかわらずだ。混迷の時代に求められるのは政治でも、企業でも強力なリーダーの存在である。リーダーはどこにいるのか。

[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

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混迷する参院選

 普天間基地移設問題の「期限」である5月末が近づいてきた。鳩山首相は、この問題の決着(どこまでが行けば「決着」なのかという定義の問題は残っているが)を付けられなければ、退陣するのだろうか。ご本人は「体を張って」とか勇ましいことをおっしゃっているのだから、きっと米国の了解も得られず、地元の了解も得られなければ潔く退陣されるのだろうと思う。

 もしここで退陣しなければ、鳩山政権への支持率も民主党への支持率もさらに下がるだろうから、それこそ参院選の見通しが立たなくなる。いかに新党が乱立しているとはいえ、その分、票が分散されて民主党が有利になるというのは「取らぬ狸の皮算用」というものだ。もともと昨年の総選挙そのものが、民主党への積極的な支持というより、自民党を政権の座から引きずり落とすという側面が強かったと思う。

 しかし民主党が衆院選で圧勝したため、有権者には「勝たせすぎた」という気持ちが強い。それだけに今度の参院選では民主党に単独過半数を取らせたくないという力が働くだろう。

 それにしても、民主党政権の体たらくは何と表現すればいいのだろうか。発言がぶれすぎると批判される鳩山首相。ぶれるのは人の言うことを聞き過ぎるからだそうだが、それもおかしな話なのである。首相とは最終的に決断をする人だ。担当大臣などの話をよく聞いて、それで納得し決断をしたならば、小沢幹事長が何を言おうがその決断を変えてはいけない。そうでなければ部下である大臣は仕事ができまい。自分の判断に総理がお墨付きを出したと思ったら、翌日にそれがひっくり返るというのは、現場にとってみれば最悪だ(組織の中にいる人ならこんな上司は願い下げだと思うに違いない)。

誰が責任を取るのか

 米国の大統領ハリー・トルーマン(第二次大戦で日本への原爆投下を承認した大統領)は、机の上に”The Buck Stops Here!” と書いたボードを置いていた。この意味は「すべての責任は私が取る」ということである。自分より後ろにはもう責任を取る人がいないということの覚悟を表した言葉だ。首相という存在も同じだ。

 もちろん「過ちを改めざる、これを過ちという」という論語の言葉もある。間違ったら直せばいいのだが、間違いを頻繁に犯すようであれば、リーダーとして判断力に欠けるということだ。その意味では、鳩山首相は正直であるには違いないが、政治家として、しかもリーダーとしては判断力、決断力に欠けるところがあると言わざるをえまい。

 一方の下野した自民党はどうだろう。谷垣総裁は、鳩山首相と同じく正直な人であると思う。とはいえ、平時ならともかく、非常時のリーダーではないように思える。自民党の解党的出直しができないばかりに、離党する人が相次ぎ、それらの人に対して何の手を打つこともできていない。本来なら、離党した人々に厳しい論理を突きつけることで党の結束を図らねばならないところだった。それが出来なかったのは、自民党という政党がいかに権力によって結びついていたかということの証左である。つまり権力に伴ううまみ、利権、が自民党という党の接着剤であったということだ。

 取って付けたように「健全なる保守」などと言ってみても、その「保守」」という言葉が何を意味するのかが国民によく分からない。きっと谷垣さんは民主党の大きな政府に対して「小さな政府」だというのだろうが、これまでの「大きな借金」をつくってきたのは他ならぬ自民党だ。それについての自己批判なしに「保守」といっても、それは国民の支持を受けないし、接着剤にもならない。

973兆円の借金

 そして新党ブームである。「みんなの党」「たちあがれ日本」「新党改革」、それに首長グループの「日本創新党」、大阪の「大阪維新の会」などなど。この中で、昨年の衆院選を戦った「みんなの党」が支持を伸ばしており、参院選で台風の目になる可能性が強いと思う。

 政界の本格的な再編はおそらく参院選後にやってくる。民主党が単独で過半数を取れず、なおかつ支持率も上がらなければ、民主党の中も一枚岩ではないからぽろぽろこぼれてくる民主党議員がいてもおかしくはない。

 もっとも問題なのは、これで日本の政治の混沌は当分収まらないということがはっきりしたことだ。実際のところ、日本には政治を混乱させていられるほどの余裕はない。今年度末に973兆円になると推計されている国の借金をどうするのか。世界からは、日本の借金は持続可能ではないとみられている。つまり、日本の国債を国内だけでは引き受けきれなくなるということだ。

 そうなればギリシアのように、プレミアム(つまりは金利の上乗せ)を支払わなければ借金をすることができなくなるかもしれない。この問題を一気に解決することは不可能だが、借金を解消する道筋だけでも示さなければ、その先に来るのは高金利だ。デフレの下で金利が高くなれば、そのインパクトは大きい。時間が残されていないなかで、どの政党も大きな日本のビジョンを提供してくれそうにないのは、国民にとって不幸なことだ。

 日本の政治がなぜこれほどまでに劣化してしまったのか。それは政治家だけの問題なのか、それとも政治家を選ぶ国民の問題なのか。劣化の病根を退治しないかぎり、日本の政治が改善される見込みはないというのは、あまりにも悲観的すぎるだろうか。

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著者プロフィール

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藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。



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