SAP共同CEOが語るSybase買収の狙い

ドイツ・フランクフルトで開催中の年次イベント「Sapphire Now」の会場で、SAPのジム・ハガマン・スナベ共同CEOに買収の狙いについて聞いた。

» 2010年05月17日 19時59分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 独SAPは5月12日に、米Sybaseを58億ドルで買収すると発表した。5月17日、ドイツ・フランクフルトで開催中の年次イベント「Sapphire Now」の会場で、SAPのジム・ハガマン・スナベ共同CEOに買収の狙いについて聞いた。

 両社は2009年の3月に、iPhoneやWindows Mobile携帯などの携帯電話向けに、ビジネスソフトを提供することで提携すると発表していた。ERPやCRMを統合した「SAP Business Suite 7」をSybaseのモバイルプラットフォームで利用できるようにするという内容だった。


(以下、ジム・スナベ氏の談話)

 SAPがSybaseを買収した最大の理由は、Sybaseのモバイル技術の獲得とインメモリ技術への注力にある。

SAPのクラウドコンピューティングヘの取り組みである「SAP Business By Design」に関して、7月に最新版の「2.5」をドイツ、米国、フランス、中国、インド、英国の6カ国でリリースすることを明らかにした

 企業におけるコンピューティング環境は従来のデスクトップから、現在はモバイル分野へと急速に移りつつある。Sybaseにはモバイルデータベースなどのモバイル技術が豊富にあり、買収することでSAPは分析ソフトウェアなどの分野に加え、企業向けモバイル分野でも主導権を握れる。もちろん、Sybaseが持つ顧客ベースの獲得も目的の1つだ。

 もう1つの要因は、インメモリ技術への注力だ。SAPが持つインメモリ技術は他社を1年半ほどリードしていると考える。これをSybaseのモバイルプラットフォームで活用する考えだ。

 インメモリ技術を活用することで、データの処理能力は飛躍的に上がる。このため、従来とは異なるコンピューターの利用が可能になる。例えば、大規模なデータベースを参照した上で、分析結果からビジネス的なシミュレーションをするといった場合、もし処理が速ければ、同時に複数の戦略を策定し、比較できる。最も優れた戦略が見つかるまでシミュレーションするといった使い方ができるのだ。(従来の方法では、シミュレーション作成の処理が重いため、1つの戦略をつくるための作業負荷が大きい)

 つまり、インメモリ技術を前提にすると、アプリケーションの在り方を再定義する必要が出てくるのである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆