自虐的なメタファー「ガラパゴス化」を考える戦略コンサルタントの視点(3/3 ページ)

» 2010年07月06日 08時50分 公開
[くわ原 隆志(ローランド・ベルガー),ITmedia]
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擦り合わせのプロセスそのものをブランド化せよ

 提供する製品やサービスのみをマーケティングするだけではなく「日本の製品やサービスはすばらしい・クール・あこがれる」といったブランド構築も不可欠となってきます。

 ブランド構築でも製品やサービスから一段深めて、それらを生み出すオペレーションまでを対象として行うことが必要でしょう。例えば、日本の製造業で得意とされてきた「擦り合わせ能力」を生かした製造プロセスのブランド化を考えていくといったことになります。日本の製造業が世界のトップレベルあることは間違いありませんので、日本のブランド構築のきっかけとして取り組むには最適のテーマの1つであるのは間違いありません。

 さて、最後にIT業界が「高度な擦り合わせ技術による製品やサービスの統合」をキーワードに、クラウドサービスをプレミアム戦略で売り込むことを考えてみます。

IT業界でプレミアム戦略に向けた啓蒙を

 新興国の企業を開拓するために、既にコモディティ化した製品であるCRMやワークフローなどを「クラウド型で無償」で提供することからはじめるのが良いでしょう。無償で提供することが収益圧迫につながるのではないかと気にする方もいるかも知れませんが、企業へ食い込むためには「肉を切らせて骨を断つ」ことを覚悟して望むべきです。

 次の一手は、より複雑な製品である生産管理システムを、クラウドをベースに提供し、必要に応じてコンサルティングやカスタマイズサービスを提供していきます。これらは、日本では一般的な品質レベルではありますが、海外から見ると高機能なものとして認識されるでしょう。

 しかし、これだけではまだ製品やサービスプレミアムというだけで、「仕組み」にはなりえません。

 「仕組み」にするために、生産管理システムと同期されたリアルの物流サービスや物品調達に必要なマーケットプレイスの提供などを、統合サービスとして提供していきます。このように有機的につながった仕組みを構築することで、開拓時に幅広く接点を持った企業にロックインし、より大きな収益を上げることができるのです。

 このサービスを展開していく上で、鍵となるのは日本のIT産業がプレミアムであることをしっかりと打ち出していくことです。製造業などと比べれば、IT産業はまだ世界での認知度が高くありません。そのためには、日本のIT業界を挙げてプレミアムであることをしっかりと啓蒙していくことが必要だと考えています。

 当然ここでは、業界単体で行うことのみならず、先に世界で実績がある業界の「ブランド」を上手に使うことなども、考慮するべきです。

 日本のIT産業が「やれること」と、そのために「やらねばならないこと」は、まだまだたくさんありそうです。

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著者プロフィール:くわ原 隆志 株式会社ローランド・ベルガー コンサルタント

くわ原原 隆志

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、現職。自動車、電機、金融、食品、旅行代理店において、新規事業立案、グローバル展開、チャネル再構築等の戦略立案や業務・組織改革の立案や、大規模PMOの運営や大規模システム調達の支援などのコンサルティングを手掛けている。


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