情報探索とヒトのモチベーションOne to only Oneの発想から生まれる現場力(2)(1/2 ページ)

1回目は、経営において顧客の声を聞くことが重要であることを説明した。2回目は、コールセンターの設計などを例にさらに深く考察する。

» 2010年07月13日 08時30分 公開
[森 一恵(早稲田大学IT戦略研究所),ITmedia]

 1回目の「コールセンターを“なじみのお店”に変える経営改革」では、経営において顧客の声を聞くことが重要であることを説明した。2回目は、コールセンターの設計などを例にさらに深く考察する。


野元 風土をしっかり作ることが大切です。コールセンターでは通話処理件数や通話時間などの管理項目が設定され「しなくてはならない」という感じの管理が多いと思います。当然われわれもそういった数値をモニタリングしますが、それよりも日々のコミュニケーターの表情やコミュニケーター同士で話をしている様子などに気を配り、当社の理念を実現できる職場の風土作りを重視しています。

JIMOSのコミュニケーター

林田 コミュニケーターたちが上げてくるくる情報に対しても積極的にフィードバックしています。社長も企画担当者も、現場にフィードバックすることで「あなたたちが報告してくれた声は重要だよ」とか「あなたたちは当社の重要な戦略だよ」という気持ちを伝えています。

 また仕組みとしては、部門間での会議を多く設定したり、ITとVOCというお客様の声を分析する部署も設置したりしています。

 コールセンターにはさまざまな情報が集る。しかし情報を受け取る側が意識を持って受け取らない限り、せっかくの情報も有益な情報にはならない。素晴らしいナレッジシステムを導入してもそこにナレッジをインプットしようという人の意志がない限り、情報価値を高めることはできない。

 価値ある情報を収集するために、その情報の接点になっているヒトの意識を高める。これは簡単なようで意外と実践されていない。JIMOSはまさにこの点を意識した組織風土作りを積極的にしている。

 今回の取材で分かったJIMOSの取り組みを整理してみると、1点目はコミュニケーターから吸い上げられた情報を徹底的にフィードバックする活動である。「あなたの声や意見がこんなに役立っている」という姿勢を会社全体、社長、企画チームが一生懸命見せており、それにより「お客様からもたらされる情報の大切さ」が働いている各コミュニケーターのマインドに刻み込まれる。

 また、できるだけいろいろな部署とコミュニケーションする場作りも重視している。コミュニケーターのチームが企画や媒体を担当するグループのメンバーと交流することにより、新しい視点や考えも醸成される。さらにコミュニケーター自身が自分の会社への貢献度合いを知る良い機会になっているのである。

 次がチームワークに重きを置いた「風土」づくりである。一般的なコールセンターでは目標通話件数の設定など、達成目標が設定される場合が多い。しかし、JIMOSは日々のコミュニケーターの様子や行動など実に細かな配慮を示す一方、チームに自由裁量を与えたマネジメントを展開している。

 例えば、月に1回開催される「ベストリボン賞」である。毎月、チームのリーダーがその月に頑張ったコミュニケーターを推薦し、投票で賞を決める制度である。その評価ポイントは、「いつも笑顔でお客様に提案ができている」「接客スキルを高めるための他メンバーへのフォローを頑張った」など、定性面での評価が多く、定量的な紋切り型評価ではない。今はまだ実験段階とのことであるが、お客様と何を話すかなどのガイドラインを外し、顧客に対応するオペレーターの判断に委ねる取り組みをしている。

 最後が、「仕組み」である。お客様からの問い合わせ対応履歴を定量的に集計分析できるCRMシステムと、顧客の声を分解して整理する役割を担うVOCを整備した。つまり定量と定性の両面の仕組みを備えている。

 組織として情報を探索し、その情報を組織の中に持ち込むモチベーションの源泉は、場作り・風土・仕組みの3つがうまくコラボレーションすることで実現することが分かる。

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