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» 2010年07月21日 09時16分 UPDATE

戦略コンサルタントの視点:「和風グローバル商材」の開発は日本ベンダー成長の源 (1/3)

IT大手4社の業績は、売上高が横ばいの富士通、NTTデータ、売上減少の日立製作所、NECと差が出ています。今回は将来的な業績も左右する大手システムベンダーのグローバル戦略について考察します。

[大久保 達真(ローランド・ベルガー),ITmedia]

『戦略コンサルタントの視点』のバックナンバーはこちら


 2009年度決算が発表されましたが、大手4社の業績は売上高が横ばいの富士通、NTTデータ、売上減少の日立製作所、NECと差が出ています。

 一方で、各社が発表している成長戦略は多くの共通点が見られます。クラウドコンピューティングへの投資、サービスへの注力、M&Aの実施、グローバルでの成長といったところは、大手4社に共通したキーワードですが、今回は大手システムベンダーのグローバル戦略について検討してみることにします。

類似する各社の環境認識とグローバル戦略

 各社の環境認識は共通しています。今後は大きな成長は見込みにくい国内IT市場と、新興国が成長を牽引するグローバル市場。成長にはグローバル化が不可欠です。

 各社の海外売上比率の目標は次のとおりです。

  • 富士通は2011年度までに2.5%増で40%
  • 日本電気(NEC)は2012年度までに6%増で25%
  • 日立製作所(日立)は2012年までに9%増で50%超
  • NTTデータは2012年度に14%増で20%

 これらの目標の達成手段については、「ミッドレンジ製品分野」「マネージドサービス」などと概要的なものは示されていますが、具体的な戦略への落とし込みはこれからと言えそうです。

 この目標の中でひときわ目立つのが、日立製作所の目標値です。日立製作所は2015年までに海外売上高を4000億円増の8000億円に成長させる計画であり、その増額のうち3000億円は事業買収によって実現することを想定しています。また他の3社も大規模な買収を実現手段として想定しています。

 買収そのものは、手段として効果的ではあります。ただし、これらの大手ベンダーは、必ずしも買収が上手な会社ばかりではありません。現時点では「目標数値は掲げた、予算も準備した、戦略は作れていない」といったところでしょう。

 買ってはいけないベンダーを買わないためになどを参考にしていただき、戦略的に意味のある買収をしかけていってもらいたいところですが、海外となったとたんに「戦略下手になってしまう」原因はどこにあるのでしょうか。

日本ベンダーなりのユニークなグローバル商材の必要性

 われわれが見るに、戦略立案段階で「海外に出る」というレベルにとどまっており「海外市場で(グローバルITベンダーと)いかに戦いに勝つか?」という視点が欠落している点にあるのではないかと考えています。

 国内では、既存顧客をロックインし、顧客内シェアを維持する戦略を各社は志向しているでしょう。現地企業を次々に買収し、同様の戦略を実施していくことも、作戦として無いわけではありません。ただこれだと、海外各国での局地戦ばかりが増加します。マネジメントコストの増加や、本体とのシナジーの無さを考えても、あまり賢いやり方とは思えません。その前に、これを戦略とは言い難いと考えますが、ほとんどのベンダーの発想はこの域を出ていないでしょう。

 海外展開を戦略的に考えるのならば、上述の局地戦を行う一方で、海外市場で魅力のある「グローバル商材」を軸としたマーケティングや営業戦略、(現地での)パートナー戦略などが必要となってきます。

 ここで言う「グローバル商材」とは、ソフトウェア、ハードウェア、サービスなどのパッケージ化されたものを意図しています。一般的に見られる「他社製のパッケージソフト」を用いた単なるシステムインテグレーションや受託ソフトウェア開発は含めてはいません。

 海外市場においてグローバルITベンダーとの競争に勝つためには、日本ベンダーなりのユニークなグローバル商材の確保は避けて通れないテーマです。 

 この観点から大手4社の動きについて見ていくことにします。

そろそろハードウェア商材を本気で考えるべきNTTデータ

 NTTデータはここ数年積極的に海外での買収を行っています。しかし、これらの買収を急ぐ最大の理由は、日本の大口顧客の海外サポート体制を確立できなければ、いずれ国内案件すら受注できなくなる、という危機意識が中心にあるようです。そうだとすれば、グローバル戦略としては、やや内向きの戦略と言わざるを得ません。

 また、グローバル商材を見ると、ビジネス・インテリジェンス関連の商材などの単発的な打ち出しにとどまっています。

 NTTデータは、システムインテグレーション領域で、中立性を保ち「お客様に最適な商品(主にハードウェアやミドルウェア)を選定する」ことを企業文化として保有し、それが強みの源泉の1つにもなってきました。

 ただし、今後ビジネスの規模が拡大していくクラウドを考えた場合、IT業界、戦略の甘い買収はそろそろやめる時でも述べましたが、ハードウェアの供給能力を有するベンダーの方がかなり有利になっていくと考えられます。

 クラウドの普及期に入る今こそ、NTTデータにとっては、ハードウェアベンダーあるいはメーカーのハードウェア部門の買収を仕掛けることが、避けられない選択肢になると考えられます。

日立は社会インフラ領域での商材の早期具体化が課題

 日立の情報・通信システム事業では、ストレージ事業、コンサル事業を海外展開の軸としています。これらは海外で買収した事業が大きな比率を占めており、これらに続く第三の柱も今後事業買収していく計画です。

 買収そのものを否定するわけではありません。しかし、われわれは外部ではなく、日立内部のノウハウを活用できる領域に、グローバルITベンダーと競争できる商材の原石があると考えます。日立で言えば、社会インフラ領域です。

 IBMが「Smarter Planet」を打ち出し、事業ポートフォリオの拡大を志向していますが、同一企業内にIT以外の実現手段を有している日立製作所は、IBMに比べてもかなり優位な立場になっていると見ることもできます。

 日立の中期計画では、既存事業である社会インフラとITを融合した「社会イノベーション事業」に1兆円の投資をするとしています。グループ内の社会インフラ事業と?水処理、発電、電線、鉄道など?、IT関連の事業の知見・資産を融合させることによる、グローバルに展開できるパッケージをいかに早く生み出していけるかが鍵となるでしょう。

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