進まぬ変革、いら立つ経営者、結局は陣頭指揮しかないのか戦略コンサルタントの視点(2/3 ページ)

» 2010年08月10日 15時25分 公開
[大野 隆司, 大久保 達真(ローランド・ベルガー),ITmedia]

ケース:土曜日の執行役員勉強会

 大手企業A社では、あるプロジェクトの開始が遅れていました。「総論では賛成だが、実現できるのか、優先順位が妥当か」といった意見が噴出し、各部門の執行役員や部長の間での意見対立までを発生させていました。

 EIOは関係者と数回の濃密なディスカッションをもちました。その結果、総額500億円に上る巨大な投資額に恐れを感じでいること、そして成功への自信が持てないために、責任を回避しようとしている点に真の原因があることがわかりました。

 戦略から導かれる改革施策の必要性、他の施策との整合性、優先度のメリハリ、検討体制の案、費用対効果などを、EIOは社長、副社長らと周到に準備したうえで、関係執行役員を交えた「週末勉強会」を実施しました。

 数回の週末勉強会では、事前の根回しを経て、社内でタブーとされていた議論もあえて提起しました。これまでにない本音ベースでの活発な議論が行われ、不安は払拭され、プロジェクト実施の機運も高まりました。

 その後の経営会議にて投資は承認され、改革に向けたプロジェクトが即座に立ち上がりました。

経営者の“目”と“耳”現場に入り込むEIO

 プロジェクトの中での現場主体の検討は、簡単には進みません。現場にとっての課題解決の難しさに加え、動機不足や部門ごとの意見対立、さらには事務面での調整負荷など、さまざまなものが障害となってきます。

 EIOのプロジェクト管理では、現場に密着し、経営者が理解すべき問題のみを抽出し、論点を整理し、提示する機能が重要となります。経営者にはなかなか届くことの無い「現場の深い、手触り感のある情報」を経営者の目線で見直し、改革推進に向けた改善策を考案し、提示します。

ケース:大規模プロジェクトの推進体制再編

 大手企業B社では、大小100以上のプロジェクトを進めていましたが、各プロジェクトの「遅延」が常態化しつつも、なかなか有効な打ち手が出せない状態でした。

 EIOは全てのプロジェクトに対して要員数と業務量の定量的な評価を行いました。また、プロジェクトの現場とのディスカッションから、仕事が集中し過ぎてボトルネックとなっているメンバーの特定、段取り下手や専門知識の欠如などのスキル面の問題など、真の原因を特定していきました。

 定量的な要員不足を明確にするとともに、なかなか経営層には上がってこない「現場の声なき声」を丁寧に拾い上げていき、負荷平準化はもとより、「人」のスキルや性格の問題にも着目した改善策を経営層に報告しました。

 人事異動時期に合わせ、プロジェクト体制が抜本的に再編され、プロジェクトの遅延は急速に解消されていきました。

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