企業サイトの生命線になるWebガイドライン

経営や事業戦略と企業のWebサイトが密接にかかわるようになってきた。企業サイトの品質を一定の水準で保ち、コンテンツを更新し続けていくためには、制作ルールやポリシーをまとめた「Webガイドライン」の制定が急務となっている。

» 2010年08月31日 13時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 企業におけるWebの価値が高まりつつある。経営や事業戦略と企業サイトが密接にかかわってきているからだ。こうした中、企業サイトの制作ルールやポリシーをまとめた「Webガイドライン」を制定する動きが出てきている。

キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部 ウェブマネジメントセンター センター所長の増井達巳氏 キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部 ウェブマネジメントセンター センター所長の増井達巳氏

 「記述レベルがばらけていたり、量が多すぎて担当者が見ていないなど、Webガイドラインに関連する企業の悩みは多い」。キヤノンマーケティングジャパン コミュニケーション本部 ウェブマネジメントセンター センター所長の増井達巳氏はこう指摘する。8月30日に開催されたセミナー「Webサイト価値を高める基盤 〜次世代ガイドライン」でのことだ。

 増井氏によると、Webガイドラインを制定している企業は多いものの、章立てやフォーマット(PDF、HTML、PowerPoint)、冊子の体系(1冊か分冊か)、Web標準の準拠レベルなどの項目は、企業によってばらつきがあるという。Webサイトの構築やコンテンツの更新を内製化している企業や制作会社に外注している企業を問わず、「担当者の引き継ぎやチームでWebサイトを構築する場合、ガイドラインは不可欠になる」(増井氏)。

 なぜWebガイドラインの制定に注力する必要があるのか。「ガイドラインはコミュニケーションツールになる」(増井氏)からだ。企業がWebサイトを構築する場合、その担当者は経営層やコンテンツオーナーである各部門、その他の社内関係者、Webサイト制作のパートナー企業などと折衝していく必要がある。Webガイドラインはこれらの利害関係者の共通言語となり、多岐にわたるWebサイト構築のやりとりを円滑にする。

Web担当者をめぐるステークホルダーの関係 Web担当者をめぐるステークホルダーの関係

 「ブランディングやマーケティングの観点から、企業サイトは一定の水準以上の品質で更新することが重要だ」と強調する増井氏。その思いが反映されているのが「キヤノンホームページ(canon.jp)」だ。同サイトは「Web標準化(CSS+XHTML化)」を進めるために、過去数回にわたり大規模なリニューアルを実施してきた。その際にWebガイドラインを定め、「コンテンツオーナーの責任や徹底事項、Webサイト全体の規定」などを担保してきたという。

 「企業サイトは常に未完成であり、更新し続けるもの。(サイトの)方向性や品質が常に保証されることが必要」という増井氏の言葉からは、Webガイドラインが企業サイトの生命線になることが伝わってくる。

canon.jpが推進してきたWeb標準化の取り組み canon.jpが推進してきたWeb標準化の取り組み

Webサイトに携わるすべての人にWebガイドラインを

 Webサイトの礎となるガイドラインを正しく制定したいという企業ニーズに応える取り組みも出てきた。

 8月30日、セミナーを実施した社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会は、「次世代ガイドライン・フレームワーク」を公開した。これは、企業サイト構築における担当者同士の「コミュニケーションロスや出戻りによるコストの発生を防ぎ、Webサイトの品質を高めていく」(増井氏)ためのコンテンツだ。

次世代ガイドライン・フレームワークのイメージ 次世代ガイドライン・フレームワークのイメージ

 HTMLのWebページが3000以上に上り、月50万円以上の運用コストが掛かっている企業サイトを対象としている。同研究会の分科会であるサイトマネジメント委員会に参加する国内企業12社の協力を仰ぎ、企業サイトの構築に不可欠な「設計」「実装」という2つのガイドラインを文書化している。

 「コンテンツ設計ガイドライン」はコンテンツの定義や情報設計、アクセシビリティやユーザビリティなど、Webサイトやコンテンツの設計時に確認が必要な項目をまとめている。企業サイトのコンテンツを設計する企業担当者を対象ユーザーとしている。「コンテンツ実装ガイドライン」は、使用できる技術要素やマークアップ仕様、テンプレート、クライアント環境、スタイルシートなど、コンテンツを実装する企業担当者、Web制作会社向けに仕上げている。

 企業サイトの構築や運営では、Web担当者とコンテンツオーナーの責任範囲の不明確さやWeb制作におけるチーム間の理解不足が足かせになる。これは、Webサイトを通じて企業の価値を下げることにもつながりかねない。企業サイト運営には、Web担当者、制作担当者の共同業務のずれをなくし、双方のやりとりを円滑にするルール作りが求められる。次世代ガイドライン・フレームワークはそこに貢献しそうだ。

No. 企業名
1 キヤノンマーケティングジャパン
2 サントリーホールディングス
3 コクヨ
4 富士ゼロックス
5 日本ブランド戦略研究所
6 富士通
7 日本ユニシス
8 オートノミー
9 ミツエーリンクス
10 味の素
11 ロフトワーク
12 アカマイ
次世代ガイドライン・フレームワークの検討に参加している主な企業


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