「強い会社の秘訣」は「弱い日本の秘訣」の構図を見抜け生き残れない経営(2/3 ページ)

» 2010年09月14日 08時36分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]

 特集が指摘する「攻めの経営」が、日本経済再生や日本国民の幸せにつながらなければならない。しかし、企業が個別最適に走り、国が日本経済再生に無策で、マスコミが個別企業と同じ視点で論じては、事態は悪化するだけだ。国が規制緩和や法人減税など内需志向の条件を整備し、デフレ脱却施策を実行し、各企業がそのもとで努力をするところから、国内需要が喚起され、国内雇用機会が生まれ、日本経済は再生される。6月に閣議決定の「新成長戦略」にある程度の策は盛り込まれているが、具体性に乏しく、実現性に疑問が残る。

 例として、いくつかの具体策を提案しよう。

 内需拡大のために、デフレスパイラルに歯止めをかけ、労働分配率を引き上げ、人口減に対処するなど、焦眉の施策は山ほどあるが、財政負担は避けなければならない。すでに存在する莫大な潜在需要を顕在化する手法を議論するのが、内需喚起を確実にすることだと思う。潜在需要については、医療、教育、農業など多くあるが、ここでは「高齢者介護」「育児」「住宅」の3テーマに絞る。なお、「政府支出」「企業設備投資」や「家計支出」の面からの議論は、機会を改めたい。

高齢者介護需要の顕在化

1.高齢者介護市場は大きい

 65才以上の要介護高齢者は、2010年480万人、2020年644万人と推計され(エイジング総合研究センター)、一方施設介護の収容能力は、特別養護老人ホームなど政府補助が厚い施設で約92万人(「平成21年版厚生労働白書)、高価だが民間有料老人ホームで約63万人(「2005年社会福祉施設等調査結果)、これから家族の手による要介護者が300万人以上、その分介護施設の需要があると予想される。

2.施設不足の理由

 建設・運営時共80%ほどの政府補助があるのは、社会福祉法人だけ。財政難で補助が限られ、補助のない民間施設は運営費が高くなり、一般人の手が届かない。

3.対策案I 規制改革:・社会法人優遇の法制度を改正、民間業者の参入を促進する。

  • 使用しなくなった学校など公共財産を開放できる法整備。
  • 施設建設時支給される補助金用途の使途自由化など。

  対策案II 共有老人施設の建設:既存の「安心ハウス」の実績を検証し、手直し。

4.顕在化可能需要量:共有老人施設建設に数兆円、新入所者300万人で数兆円、介護から開放された家族の消費活動で数兆円、合計30兆円以上(10兆円/年)

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