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» 2010年09月27日 19時39分 UPDATE

藤田正美の「まるごとオブザーバー」:日本完敗、中国は?  (1/2)

圧力を強める中国。ただこれで中国の全面勝利というわけでもないだろう。

[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

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 尖閣諸島付近で操業していた漁船の船長が海上保安庁の巡視船に体当たりをして逮捕された事件。これをめぐって日中関係は急速に悪化していた。中国政府は丹羽大使を深夜に呼びつけるなど、激しい抗議を繰り返し、船長の即時無条件釈放を要求した。

 さらにガス田の共同開発をめぐる交渉を延期、閣僚級の往来を停止、航空路線増便の交渉中止、と矢継ぎ早に手を打ってきた。さらには日本への団体旅行を中止した中国企業やら、日本のゼネコン社員4人が中国で軍事区域に「侵入」したとして逮捕される事件まで起きている。結局、那覇地検は船長を処分保留のまま釈放することを決定。菅政権は「検察の総合的判断でそれはそれで了とする」(仙石官房長官)として、幕引きを図る意向のようだ。

 それにしても、中国側の対応は常軌を逸していると思う。大使を呼んで抗議するのは理解できるとしても、次々と対応をエスカレートさせたばかりか、中国から日本に向けて出荷されるはずのレアアース(希土類)を税関が差し止めたという(貨物が止まっていることは事実だが、船長逮捕事件との関連は確認されていない)。さらに対抗策として円を買って円高に誘導するという提案もあったようだ。

 一方的に圧力を高める中国政府に対して、日本側はほとんどなすすべがなかったように見える。もちろん「国内法に従って粛々と手続きを進める」というのはその通りであって、それ以上でもそれ以下でもない。しかし問題は、船長の釈放に当たって外交的な判断を検察当局がしたかのような発言をしたことである。検察当局がそんな判断をすること自体、おかしな話だし、政権が検察に指示したのなら、そういうべきだと思う。もちろん政権の判断をめぐって国内からそれなりに厳しい反発が出るだろうと思うが、そこは政権としてどう考えたのかを説明すればいい。結果的に、政権としての判断を逃げたように見える。

 ことは外交の問題だから、どのように見えるのかということが極めて重要だ。第三者的に見ても、今回の一連の流れを振り返ると、中国がどんどん圧力を強める中で、結局は日本が屈服したように見える。圧力を強めれば結局は「折れる国」というレッテルが貼られれば、国にとってプラスになるはずがない。

 ただこれで中国の全面勝利というわけでもないだろう。とりわけ中国が対日輸出を差し止めたという行為は、たとえそれが中央政府の指令によるものではなくても、中国は政治問題を冷静に解決しようとはせず、経済的な強硬手段を使っても自国の意思を押し通そうとする国というように受け取られる。こうなると中国にある資源を依存するということは、それだけで中国に弱みを握られることを意味する。こうなると中国と安心してビジネスを展開しようという企業が少なくなるはずだ。

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