組織外の情報こそ必要なのに内部情報にこだわる経営者生き残れない経営(4/4 ページ)

» 2010年09月29日 08時55分 公開
[増岡直二郎,ITmedia]
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 1.まず、経営者自ら第一線の現場に出掛けること、2.そして常に耳触りの良くない情報を求める姿勢を持つことだ。参考になる例が幾つかある。

 電気メーカーの販社会や業界の集まりがあると、大メーカーは営業担当副社長か役員が出席する。しかし、N社とP社はトップが必ず出席する。他のトップや経営者が早めに会場を退出するのに、両社のトップは必ず最後まで残る。特にP社社長は、何百人もの出席者が流れ解散をし、数人しか残っていない最後の最後までいる。

 これでは、さぞ多くの有意義な情報が彼の耳に入っていることだろう。早めに退場する経営者は、自宅へ辿り着いてくつろぐか、他の会合に出かけるかだろうが、数少ない外部情報収集の絶好のチャンスに、早く帰宅してくつろぐこともなければ、掛け持ち会合を設定することもなかろう。

 もう一つの例だが、トップ始め経営幹部が、顧客を訪問することがある。しかし支店では、日頃関係の良い顧客や、耳触りの悪い情報を口にしない顧客を選んで、同行する。経営幹部は、居心地のよさを感じて、満足して本社に戻る。しかし、X社のトップや経営陣は、自分で訪問客を指定し、どこを訪ねても「わたしは、耳触りの良くない情報を聞きに参りました。それはお互いの企業を良くしたいからです。企業を良くするための悪い情報をお聞かせ下さい」と頼んで歩いた。注文が減る傾向にある顧客、重要案件を失注した顧客、取引のない顧客などへ、支店は幹部を連れ歩かざるを得ない。

 ドラッカーの主張する「外部情報」を得るには、情報リテラートを高めたり、外部情報を取り入れて加工したりする手法やシステム構築が必要なのだろうが、何よりもまず「トップの姿勢」ありきである。

著者プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。



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