「一瞬も一生も美しく」の実現に向けたお客さまサポートに向けて(前編)資生堂が貫く美学(2/3 ページ)

» 2010年10月05日 08時00分 公開
[森 一恵(早稲田大学IT戦略研究所),,ITmedia]

「世の中に役立つ企業の実現」に向けて

 資生堂では「世の中の役立つ企業の実現」を目指し、働く一人ひとりが「お客さま志向」の考えに基づいた意識を醸成するさまざまな取り組みがなされている。

 まず「ステークホルダーの方々に対してどのような企業行動をとるのか」を宣言したTHE SHISEIDO WAY。これを具体化し、一人ひとりの行動基準として「THE SHISEIDO CODE」がある。これは資生堂が「100%お客さま」の目線に立ち、世の中に役立つ企業になるための行動指針として設定しており、社員全員が認識共有している共通理念である。

 全てのスタッフはこの理念に基づく教育がなされ、常にこの精神を忘れない行動と意識が求められている。このような組織理念を背景にしてお客さま窓口を本社汐留オフィス内に置くだけでなく、全国の事業所にもお客さま窓口担当者を配備し、地域密着型体制をとっている。電話やWebなどの通信手段を用いたやりとりだけでなく、知識豊富な社員が直接それぞれの地域の「お客さま」に会って対応できるような体制が敷かれている。

 次に、「お客さま」が日々の生活の中で感じることを直接的に体感し、参加者全員で共有し、「お客さま」の視点から日々の業務を見直す取り組みとして「お客さまウォッチプログラム」「お客さま窓口モニタリングプログラム」を設けている。この取り組みは製造を担う工場のスタッフを対象にするもの、企画・開発スタッフ向け、販売スタッフ向けなど、資生堂全社員が参加できるように、担当業務内容に応じてさまざまなプログラムが組まれている。

 常に「お客さま」目線で自分の仕事を振り返る場として位置づけられているのだ。この活動を通じ、疑問や要望を同じ目線で社員が体感することで、よりお客さまに近い感覚で企業活動がなされる連鎖を保っている。

 最後が経営者の関与である。資生堂のような巨大企業で、組織も非常に巨大であるにもかかわらず、「お客さま窓口」に経営トップが顔を出し、現場のスタッフとコミュニケーションし、お客さま窓口に集まる情報がいかに企業として重要であるかについて日々の行動や言動で示しているという。

 資生堂情報企画部課長の毛戸一彦氏によると、「入社以来一貫してお客さま志向の考えに基づいた社内コミュニケーションや教育がなされており、自然と考えも行動もそうなっている」とのことである。以上のような「お客さま志向」のマインド設定を継続的に行い、常にお客さまの立場で物事を受け止めそして実際の活動につなげていくという組織風土の構築に努力している姿が見える。

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